鎖場の通過で自分を確保したり、クライミングでの必須装備と言えば、スリングです。
でも、種類が多すぎて訳分からないですよね!
ダイニーマ?ナイロン?冬は凍るとか凍らないとか。
講習会などで必要になり、とりあえずお店の人から言われるままに買ったり。
なんとなく買った物を持ち続けたりしますよね。
僕もクライミング用品の売り側だったのでよく分かります。
このブログでは、元登山ガイドステージⅡ&元登山用品店に勤めていた僕が、スリングについて徹底的に解説をします!
現場で培った知識と経験を出し惜しみなく解説しているので、スリングについてかなり詳しくなれちゃいます!詳しいプロフィールはこちら
このブログを読むと、自分の使い方にマッチしたスリングを選べるようになります!
また、アルパインクライミングでの適切なスリングの使い方についても学べます。
■ボディハーネスにするなら、身体が痛くなりにくい幅広のナイロンスリング!
■沢登り・雪山で使うなら、濡れても強度低下が起きにくいダイニーマがオススメ!
■クライミングで大量にスリングを持つときは、コンパクトなダイニーマがオススメ。
■終了点の構築には、衝撃吸収するナイロンが良い。
スリングについての知識を身につけよう!
そもそもスリング(ソウンスリング)とは?ナイロンとダイニーマの用途
▲輪っか状(ソウンスリング)のクライミングギアの事ですね!
素材は主にナイロンとダイニーマがあります。
ナイロン・ダイニーマの特徴については、おおまかに以下の通り!
ナイロン製スリングは幅が太いのが特徴
ナイロン製スリングはダイニーマに比べて幅が太くて安価なことが特徴です。
- ▲左から15mm・15mm・12mm・18mm
- ▲中空タイプ
- ▲平織タイプ
ダイニーマに比べて安価なので、手始めなスリングとしては最適です。
クライミングで使うなら、衝撃吸収性もあるので支点構築等に向いてます。
濡れたり凍ったりすると強度低下が大きいので、沢や雪山には向いてません。
また、ナイロンスリングには織り方が2種類あります。
■中空タイプ
とてもしなやかなのが特徴です。一般的なのはこちらです。
■平織タイプ
とても硬いのが特徴です。丈夫なので、クライミングの支点構築にも。
例えば、講習会などで使われる簡易ボディハーネスを作るなら中空タイプのナイロンスリングがオススメ!幅が広くしなやかな方が身体に対してダメージが少ないからですね。
ダイニーマ製は細くてコンパクト!
ダイニーマ製品は、幅が細く、コンパクトなのが特徴です!
- ▲幅は大体8~10mm
- ▲白の部分がダイニーマ。色の有る所はナイロン
細くてコンパクトなので、大量にスリングを持つ必要がある場合に向いています。
濡れたり凍ったりしても強度低下は低いので、沢や雪山に向いています。
クライミングで使うなら、結び目による強度低下が大きいので支点構築にはあまり向いてません。
白色の部分がダイニーマで、色のついた所はナイロンです。
ダイニーマをメインとして、ナイロンを混紡した物が一般的なダイニーマスリングとなります。
スリングの長さは、輪っかの状態での長さのことをいう
「120cmのスリング」というのは、輪っかの状態での長さのことを言います。
長さは大体なのが一般的です。(ちゃんと測ると120㎝と表記してあっても115cmとかになります)
スリングの寿命は明確に決まってないけど、目安はある
スリングには明確な寿命は決まってません。
使い方によっては数年持つこともあれば、使用一発でダメになる事もあります。
なので、使用前に自分で点検をする必要があります。
- ▲(奥)古いスリング (前)新しいスリング
- ▲けば立ったスリング
新しいスリングと古いスリングでは、色が全然違うのが分かりますね。
色はある程度の基準になりますが、それよりも細かい傷や毛羽立ちを見てみましょう。
全体的に毛羽立ちが目立ち始めたり、目に見えてダメージを負ってたりしたら買い替えの時期です。
タグに記載された製造年月日も1つの指標になります。
スリングの取り扱い説明書に耐用年数も書いてありますが、あくまで目安としましょう。
強度はタグを見てしっかりと確認しておこう
- ▲強度についてはタグに記載されている
- ▲自作スリングには注意
強度はタグに書いてあるのでしっかりと確認しておきましょう。
基本的にソウンスリングは22kN(大体2.2トンの重さに耐えれる)の強度がありますが、物によっては15kNなどもありますのでしっかりと確認しましょう。
また、ナイロンロープをダブルフィッシャーで結んだ自作スリングは、6mmのロープで7.5~10kN程度しか強度がありません。
用途としては、懸垂下降の捨て縄や、プルージック程度ということになります。
スリングのNG行為とお手入れ方法
- 絶対NGな使い方
- カラビナを使おう!
初心者などは懸垂下降などでやっちゃいがち?なミスですね。
スリングに直接ロープをかける使い方は絶対にNGです!カラビナを使いましょう。
特にダイニーマは融点が低いので、ロープとの摩擦でスリングが破断してしまいます。
また、スリングやロープに油性マジックで名前を書いたり、マーキングするのもNGです!
油性マジックに含まれる有機溶剤がナイロン製品にダメージを与える可能性があるからですね。
スリングやクライミングロープにマーキングをしたい人は、こちらの商品がオススメ。(ロストアローHPに飛びます)
引用:ロストアロー ベアールHP
https://www.lostarrow.co.jp/store/g/gBE16083/
スリングやロープの洗浄にはこういった商品もありますが、僕はこれを使ったことがありません。
ロープやスリングは中性洗剤(薄い石鹸など)で手洗いをするだけでも綺麗な状態を保たせることが出来ます。
(ペツルの取扱書やマムートのHPにも記載あります。リンクで飛びます)
紫外線はナイロンを劣化させるので、手洗いをした後は陰干しをしましょう。
スリングのまとめ方(首にかけるのはNG!)
スリングって使わないうちはコンパクトですが、使うとごちゃごちゃしがちですよね。
- ▲現場ではこうなっちゃいがち
- ▲2つのスリング携行方法
携行方法として、代表的なのは右の写真の2つだと思います。
名前は僕が適当に付けましたが「巻き巻き方式」「織り込み方式」とします。
- 1度使うと織り込むのに時間がかかる
- スリングがバラけにくい
- 1回目に使うときはスピーディにセットできる
- 1度使ったあともスピーディーにまとめれる。
- 良く巻かないとスリングがバラける
- 気を付けないとカラビナかスリングを落とす
- しっかり巻けてない状態
- だんだんスリングがバラける
▲巻き巻き方式は、しっかりと巻いておかないとスリングがバラけちゃいます。
そうなると、クライミング時に足が引っ掛かったりするので結構危険です。
- ①最初のひねりが大事
- ②ひねった末端をカラビナに通す
- ③しっかりとグルグル回します。
- ④指を入れていた方をカラビナに通す
- ⑤形を整える
▲巻き巻き方式のやり方
巻き巻き方式は使った後もスリングをまとめるのが簡単です。
ただし、両手が必要なので落ち着いたときにやる必要があります。
最初のひねりを入れないとカラビナが落っこちちゃうので注意!
- ①〇を作って
- ②〇の中にスリングを通し、更に〇を作る
- ③更にその丸にスリングを作り・・を繰り返す
- ④最後の〇には末端をそのまま通す
- ⑤使うときは、最後の末端を抜くだけで一気にばらける
▲織り込み方式のやり方
織り込み方式は、織り込むのに時間がかかります。
その代わり巻き巻き方式みたいにバラけたりはしません。
マメな方は織り込み方式でハーネスにぶら下げておいて、登ってる最中に使ったスリングは巻き巻き方式でまとめるのが良いかもしれませんね。
- ▲一時的な肩掛け方式
- ▲絶対NGな首掛け。
- ▲面倒でも肩掛け!
今にも落ちそうな壁を登っている最中に120cmスリングを回収した時は、一時的に肩掛けする方式がオススメ!
スリングを再度使うときは、カラビナを外して引っ張るだけなので便利です。
60cmスリングは肩掛けがしにくいからと言って、首掛けにするのは絶対NGです。
スリング以外でも、例えばホイッスルなんかも首掛けにしておくのは危険です。
滑落した場合にスリングが何かに引っ掛かると、首を絞めるからですね。
やむを得ず首掛けにするなら、必ず服の中に入れましょう。
クライミングにおけるスリングでの「中間支点(ランニング)構築方法」
ロープの流れを良くするためにスリングを使う
アルパインクライミングでは中間支点として多用されるのがスリングです。
なぜ多用されるのか?それを知るためにロープの流れというのを理解しましょう。

赤い線がロープだと思ってくださ。
二つ目のランニング支点(クイックドロー)で大きくロープが屈折しているのが分かります。
これだと、二つ目のランニング支点でロープの摩擦が強くなります。
リードで登る人は上に登りたいのにロープがなかなか身体に追いついてこない=ロープが重いという状態になります。

そこで活躍するのがスリングです。
上の写真では二つ目の中間支点がクイックドローがスリングに変わりました。
これだけでロープは真っすぐに=ロープが軽くなります!

ハンガーボルトが無く、立木がある場合などにもスリングが有効です。
スリングの巻き方による強度低下を動画で検証した結果
沢登りや雪山、マルチピッチクライミングの終了点などなど・・・
スリングを木に巻き付ける機会は意外と多いです。
特に終了点に木がある場合は、自然保護の観点からもボルトを打ってない場合がほとんどです。
木に巻き付けるパターンは、次の表をご覧ください

引用元:HowNOT2 Youtube
- ▲それぞれの結びを引っ張って
- ▲破断した時の荷重を調べる
▲引用元:HowNOT2 Youtube
後述しますがリードクライマーが落ちた時に支点に掛かる負担は4~6kN程度。
なので、3ラップ結びが一番強度は高いのですが、ツーバイトとラウンドターンでも十分な強度です。
セッティングの速さ&簡単さを考えると「ツーバイト・ラウンドターンが良い。ガースヒッチは方法を間違えなければ良い」という結果に。
面白いので動画を是非見てみてください。
スリングを使った木での中間支点の取り方の例
それでは実際に、クライミングの現場でどのように巻き付けていけば良いのか見ていきましょう。
- ▲立木に60cmのスリングでガースヒッチ
- ▲60cmと120cmの比較
クライミング・沢・雪山では、立木にスリングを巻いて中間支点とする場面が多いです。
注意したいのは、巻き付ける木の太さによってスリングの長さを適切にするという事です。
木が細い場合に右の写真のように120cmスリング巻いてしまうと、異常に長い中間支点となってしまいます。
これでフォールしてしまうとスリング分の長さも落ちるので落下係数が大きくなる可能性があります。(ロープの流れを重視する場合には有効です)
- ▲木を使った支点の作り方の一例
- ▲ツーバイトは、スリングが緩んでしまう事も。
- ▲ラウンドターンはズレにくい。
ガースヒッチで木に巻き付けるなら適切な長さになるように配慮が必要です。
ツーバイトは緩んでしまう事があるので長さに余裕があるならラウンドターンがオススメです。
ガースヒッチは折り返し方の違いでスリングの強度が変わります。
左の折り返し(黄色スリング)で強度は約14kNまで耐えれますが、右の折り返しでは強度が約8kNまで低下します。
引用:山口県消防の資料
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/21140.pdf
便利だけど使い方を誤ると危ないアルパインヌンチャク
マルチピッチクライミングでよく使われるのがアルパインヌンチャクです。
普通のクイックドローのようにも使えるし、ちょっと長さが欲しい時にはすぐに長くすることができるので便利です。

クイックドローにスリングを合わせた物がアルパインヌンチャクです。
60cmのスリングが主流で、その理由は以下の2点です。
■60cmより短いスリングは、クイックドローで補える
■スリングが長すぎると、落下係数が大きくなる恐れがある

▲引用元:ペツルの取扱説明書
アルパインヌンチャクのカラビナをゴムなどで固定するのは危険です。
図のようにすっぽ抜けて落下してしまう可能性があります。
アルパインヌンチャクは自分でスリングとカラビナを用意して作ることが出来ますが、圧倒的に安価で販売されているのが「BDのミニワイヤーアルパインドロー」です。
安価ではありますが、こちらの記事でも書いているようにカラビナのゲートにスリングが引っ掛かってしまうのが難点です。
とりあえず数が欲しいという方にはオススメです!
クライミングにおけるスリングでの「終了点構築方法」
終了点構築方法は現場で自分で判断しないといけません。
ここでは、マルチピッチ向け終了点の一例をご紹介します。
■ナイロンスリング
結びによる強度低下が低い。多少伸びるので衝撃を吸収する。水に濡れると強度低下が大きい。
■ダイニーマスリング
結びによる強度低下が大きい。伸びないので衝撃を吸収しない。固定すると破断のリスクが高まる。
クライミングでの終了点構築には、基本的にはナイロンが良い。
しかし、ダイニーマでも使用方法によっては十分に衝撃に耐えられます。
それぞれ根拠を以下の通り示します。
「ダイニーマは結んではいけない」は嘘!?
▲引用:DMM社HP HowToBreakNylon&DyneemaSilng
https://dmmwales.com/Knowledge/June-2010/How-to-Break-Nylon-Dyneema%c2%ae-Slings
ナイロンとダイニーマを、どのくらいの衝撃でスリングが切れるかテストした動画の結果
(ピンク部分が破断した所です)
■ダイニーマ10mmはナイロン16mmに比べて破断しやすい。
■ダイニーマは結び目を作ると10kN以上の衝撃でほぼ破断
■ナイロンは伸びるので、同じ条件でもダイニーマほど衝撃がかかっていません。

▲引用:DMM社HP https://dmmwales.com/knowledge
https://dmmwales.com/knowledge/september-2013/slings-at-anchors
衝撃荷重がかかった時に、カラビナにスライドする力が加わると衝撃を吸収するというテスト動画です。
Overhand Knot()とClove Hitchesの結び目の時は、ダイニーマは破断(Sling brke)したり融解(melting)しているのが分かります。
■ダイニーマは結び目があると、破断したり融解しやすい。
■ダイニーマは結び目があってもカラビナにスライドする力があると、破断と融解がしにくい。
▲引用:ペツル社HP https://www.alteria.co.jp/sport/forces-real-fall/
落下した時にビレイヤー・クライマー・支点に対する衝撃(kN)をテストした結果です。
落下率1(F=1)の場合では、支点に対する1番大きな衝撃荷重でも6kN程度だという事が分かります。
ビレイヤーとロープが衝撃を吸収するからですね。
■単純な衝撃荷重では、ダイニーマはナイロンに比べ破断しやすい結果に。
■スリングに結び目があってカラビナが固定されるとダイニーマは破断しやすい。
→スライドする力が働けば破断しにくい。
■実際のフィールドではテストほどの加重はかかりにくいので、ダイニーマでも使い方を誤らなければ破断に十分耐える事が分かりました
特にマルチピッチでは、支点・ビレイヤー・クライマーに大きな衝撃を与えないために、1ピン目を「早く、強固に」取ることが大事です。(落下係数を抑えるためにですね。詳しくはこちらの記事の「耐墜落回数(落下率1.77)」に記載しています。)
マルチピッチ向け終了点の一例!
では実際に、具体的な終了点を見ていきましょう。
- セルフビレーをとってセカンドをビレーしているシーン
- ▲終了点構築の一例
- 固定分散と流動分散のいいとこどり
- ギアの受け渡しに便利
- 衝撃がかかってもカラビナにスライドする力が働く
- 240cmのスリングが必要(値段が高い)
- 携行するときは少しかさばる

- 適切な固定分散のセットが簡単。解きやすい。
- セットがスピーディーにできる
- 荷重方向の変化に対応できない
- インクノットが少しややこしい

- セットが簡単
- セットがスピーディーにできる
- 結びによる強度低下が無い。
- 片方の支点が外れると、もう片方の支点に大きな衝撃が加わる可能性がある。
- ▲流動分散をしてからオーバーハンドノットで固定
- ▲どちらかの支点が外れても、結び目で止まる
オーバーハンドノットが支点から遠いほど、片方の支点が外れた場合の衝撃が少なくなります。
その代わり流動分散の利点が減るので、結び目の位置はよく考える必要があります。
- 流動分散と固定分散のいいとこどり。
- 片方の支点が抜けても、結び目でカラビナが止まるので大きな衝撃にならない。
(スライドする力)
- 支点構築に少し時間がかかる
(最初に作ってしまえば、あとの支点でも流用できる)
大事なのは、終了点に大きな衝撃を与えないために、出だし1ピン目を出来るだけ早く強固に取る事です!
危険な終了点の一例!

こちらのふたつ、何が違うか分かりますか?
左は60cmスリング、右は80cmスリングを使っています。

さきほどの2つの写真の違いは、スリングの角度です。
スリングの角度によって支点にかかる荷重も変わってきます。
長めのスリングを使う事で解決することが多い!(長すぎるとビレイデバイスなどの操作がし難くなるので適切な長さを選びましょう)
ボルト支点の信頼度の見分け方
適切にスリングで支点を作ったとしても、ボルト支点がすっぽ抜けたりしたら意味がありませんよね。
- ▲支点の名称の一例
- ▲おそらく墜落は止められないだろう
- ▲アンカーを埋め込んで、短いボルトをハンガーと共に締める
岩場で使われている様々な支点をこちらの記事で分かりやすく解説しています。
もしよかったら見てみてくださいね。

保水による重量変化と凍結の違い
ダイニーマとナイロンで、水に濡れるとどのくらい重量や凍結に差が出るのか?
ダイニーマは凍らないと言われているけれど本当?
それらの疑問に応えるべく、簡単な実験をしてみました。
乾燥状態と保水状態の重量変化の実験
吸水率については、ダイニーマもナイロンもほぼ変わらない事が分かりました!
ただし、水に濡れても総合的に軽いのはダイニーマです。
乾燥 | 保水 | 吸水率 | |
---|---|---|---|
ナイロン 120cm | 89g | 141g | 58% |
ダイニーマ 120cm | 37g | 59g | 59% |
ナイロン 60cm | 45g | 65g | 44% |
ダイニーマ 60cm | 20g | 29g | 45% |
ダイニーマ100% 60cm | 19g | 29g | 53% |
ナイロン平織 80cm | 75g | 123g | 64% |
- 120cmナイロンスリング 乾燥状態 89g
- 120cmナイロンスリング 水にぬらした後 141g
実験方法は、乾燥状態を測ったあとに水にぬらして軽く絞って再計測するというもの。
- 120cmダイニーマスリング 乾燥 37g
- 120cmダイニーマスリング 保水 59g
ダイニーマのほうが「濡れても、濡れてなくても圧倒的に軽い」ことがわかりました。
凍った状態の使いやすさの実験
吸水率はダイニーマもナイロンもほぼ変わらない事が分かりました。
では凍結についてはどうでしょう?
スリングを水に浸して、冷凍庫で一晩寝かせて凍らせる実験を行いました。
冬山を想定したということですね。
- ▲凍った状態。 左から、ナイロン120cm・ナイロン60cm・ダイニーマ120cm・ダイニーマ60cm・ナイロン平織80cm・テックウェブスリング60cm
- ▲凍った状態 ダイニーマ100%60cm
冷蔵庫で眠らせたスリング達をぶら下げてみました。
ダイニーマもナイロンもガチガチに凍っています。
- ▲重りをぶら下げた状態
- ▲重りをぶら下げた状態2
均等の重り(クイックドロー)をぶら下げてみました。
ナイロンはガチガチですが、ダイニーマはすぐに解けていきました!
■ナイロンとテックウェブスリングは完全に解けるまで少し時間がかかりました。
■一番硬く凍っていたのは、ナイロンの平織でした。
■ダイニーマとナイロンが混紡されたスリングと、ダイニーマ100%のスリングに差は感じられませんでした。
■ナイロンもダイニーマも凍る。
■ナイロンは凍ってからしなやかになるまでに時間がかかる
■ダイニーマは凍った後もすぐにしなやか!
■雪山に行くならダイニーマの方が使いやすい
ズバリ!用途別オススメなスリング7選
簡易ボディハーネスで使うオススメのナイロンスリング
講習会などでまず教えてもらえるのが簡易ボディハーネスですよね。
ズバリオススメは「ロックエンパイアの20mmオープンスリング」です!
■幅が20mmと太く、とてもしなやか!
■しなやかなので、幅が太いけど結びがとてもしやすい
■幅が太いので身体に加重がかかっても、痛くなりにくい
■多くの人が使用している安心感
デメリット
■吸水率が高いので雪や沢では使いにくい
■幅広なので収納は少しかさばる
- 使用者が多い!
- 下は16mm。20mmは身体に巻き付けても安心感があります
- 圧倒的しなやかさ!
簡易ボディハーネスにするなら、150cmがオススメです!
小柄な女性は120cmでOK!
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岩・沢・雪で使うオススメなダイニーマスリング
ブラックダイヤモンドの「ダイネックスランナー」が安価で高品質です。
■安価で高品質!
■岩・沢・雪で使うならスリングは数が必要。(安いと財布に優しい)
■長さにより色も合わせたいので同じものを買いたい。
■スリングは消耗品なので、安価だとちゅうちょなく買い替えることが出来る。
■懸垂下降などの時に残置をしなければならない場面でも安価なのでダメージが少ない
デメリット
■持っている人が多すぎて被る。
アルパインヌンチャク用に60cmを4本
立木などの中間支点用に120cmも4本持っておくと安心です。
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長めのスリングもアルパインに行くなら持っておきたい
- ▲240cmは一本以上はあった方が良い
- ▲6mmと10mmとの比較。ちょっとの違いだけど長い物ほど細さの恩恵を得られやすい
上の写真はベアールの6mmの240cmスリング。(現在は6mmの240cmは売られていません)
長いスリングほど、コンパクトさで細さの恩恵を得られます。
その代わりにどうしても太い物と比べると耐久性に劣ります。
現在は細いダイニーマと言えば8mmが主流で、240cmの8mmを選ぶならエーデルリッドかマムートです。
太さは10mmでも良いという方には、値段が安くて高品質なベアール社のスリングがオススメです!↓↓
支点構築にオススメなスリング
マルチピッチの支点構築にオススメなのは、「ロックエンパイアの12mmダイニーマスリング」!
■ダイニーマとナイロンの絶妙な混紡
■ナイロンスリングにしては細く、非常にしなやか。
■しなやかなので結びも容易
デメリット
■冬や沢にはやや不向き。(ダイニーマに比べてナイロンの混紡が多いため)
終了点で使うなら長さは80cmがオススメです。
終了点のボルト間隔は強度確保の為に、大体30cm離れています
このブログで紹介している終了点のボルト間隔も30cmなので、スリングの長さは80cmぐらいがちょうど良いです。
- ▲ダイニーマとナイロンの絶妙な混紡!そして安価!
- ▲ボルト間隔30cmで、80cmのスリングでちょうど良いぐらい。終了点によっては現場で判断が必要。
スリングの材質と使い方のまとめ
■ダイニーマスリングよりも値段が安い。
■幅が太いのが特徴。(約12~20mm)ボディハーネスに良い。
■衝撃吸収性があるので、クライミングでの支点構築に向いている。
■水に濡れると重くなり、凍りやすい。強度も低下する。
■沢や雪山には向いていない。
■ナイロンスリングよりも値段が高い。
■幅が細いのが特徴。(約8mm~10mm)
■衝撃吸収性が無いので、クライミングでの支点構築にはやや不向き。
■水に濡れても重くなりにくい。凍りにくい。
■岩・沢・雪だけでなくオールマイティに使える。
■強度は基本的に保障されていない。
■結び目が解ける可能性がある。
■プルージックでのバックアップや捨て縄での使い方が一般的。
マルチピッチに必要な他の装備について詳しく解説した記事はこちら
スリングとセットでカラビナも必要です。
カラビナについて徹底的に解説したページはこちらをご覧ください。

その他、マルチピッチに必要な他の装備はこちらで網羅的に解説しています。

以上です!ではまた!