クライミング・沢登り用品の選び方

クライミングのボルトの支点や種類について図解解説!信頼できる支点とは?

クライミングに出かけた際に、命を託すといっても過言ではないのがボルトなどの支点ですよね。
見た目では安全そうだけど、具体的にどうなっているのか分からないから不安。。。
という方も多いはずです。僕も最初はそうでした。

そんな方の為に元登山ガイドステージⅡ&元登山用品店に勤めていた僕が支点について徹底的に解説をします!
支点の構造について理解をすることで、少しでも不安がやわらいで楽しいクライミングライフを過ごしていただければと思います!

クライミング用からそうじゃない物まで支点は様々!

マルチピッチを登るうえでの不安要素の一つといえば、支点ですよね。
古いルートなら支点も古い場合が多いです。
支点の知識を付けることは、「本当にこれ信用できるのかな?」という不安をなくすことが出来ますし、安全の為に必要です!

これから僕が紹介する支点はあくまで一例です。
岩場には古くから沢山の種類の支点が使われているので、「中身をみないと分からない」状態の物も多いですし、あまり深く掘り下げてもよけいに分かりにくくなると思ったからです。
より具体的に学びたい方はこちらを読まれるのをオススメします↓

著者はJFA(日本フリークライミング協会)でボルトの打ち替えをされている方なので、ボルトの見分け方などを分かりやすく紹介されています。
本記事も、こちらの書籍を参考にさせて頂いています。

支点の名称は、岩に埋める部分とそれ以外で覚えると分かりやすい。

一例ではありますが、支点は大きくこれらのパーツで分かれています。
岩の中に埋め込むアンカー(アンカーボルト)と、それ以外(ハンガーやナットなど)という感じで覚えればいいかなと思います。

そもそもクライミング用ではない支点も混在する

クライミングルートに打ってある支点の中には、クライミング用のものではない物も数多くあります。
「工業用ボルトやコンクリート用アンカー」というもので、ホームセンターで安価に買えるので岩場でもよく見かけます。

こちらは工業用アンカーの一覧です。見ておくと勉強になります(1分程度の動画です)
クライミング向けでは無いので強度が保証されていないのが特徴です。
(クライミング用は、ちゃんと埋め込まれた支点は強度が25kN以上だとされている)

昔はクライミング用品がまだ一般的でなくお店にもなかなか置いてなくて、通販も無かった時代に沢山のルートが拓かれたと聞いています。
そういった時代には、こういったアンカーボルトに頼らざるを得なかった時代背景もあると思います。
「ちゃんとしたアンカーで支点を作れよ!」と思うのでなく、「昔の人たちが命がけで作ったルートや岩場をちゃんと守ろう」という意識で登らさせてもらいたいと個人的には思いますね!

支点の見分け方と種類について。比較的信頼できる支点はどれか?

信用度が高く、最も主流なグージョンタイプの支点

ちゃんと打ち込まれたもので、信用度が高いアンカーの代表例と言えばこのグージョンボルト。
ペツルとか、ボルトなどと呼ばれることが多いと思います。(必ずしもペツルじゃないことに注意)

特徴

■オールステンレスなのでサビにくい。
■アンカーが10mmの太さで強度も高い。
■ナットを締めることにより岩の中で拡張部分が拡張していくので、ナットがちゃんと締まる=しっかり強度が出ている、と分かりやすい
■柔らかい岩質にはうまく施工できない事も
■ボルトが飛び出し過ぎている支点は、効いていない可能性がある
■ボルトが飛び出し過ぎていると、カラビナと干渉しやすいので注意

接着剤で固定し、柔らかい岩質にも対応する信頼度の高いケミカルアンカー

画像引用:ペツル社HP https://www.alteria.co.jp/

岩に穴を空けて、その中に接着剤を流し込んでからアンカーボルトを差し込むタイプです。
グージョンボルトが比較的硬い岩質に適しているのに対し、ケミカルアンカーは硬い岩から柔らかい岩までオールマイティに対応しているのがポイントです。
デメリットは、施工してから24時間は使えない事です。

特徴

■オールステンレスなので錆にくい。
■穴付近に接着剤(ケミカル)がべったりついているのが目印
■施工方法が簡単。硬い岩から柔らかい岩まで対応。
■ちゃんと施工されたものは、支点の中で耐用年数が一番長いとされている。
■非常に高価。

見た目ほど信頼できないカットアンカー

かつてペツルから販売されていた物で、墜落を止めるのではなく下降用として販売されていたものです。(写真のアンカーはホームセンターで買ってきたもの)
ハンガーに6角形のボルトの頭が見えたら、カットアンカーです。

ボルトが8mmで施工されている物もあり、グージョンボルトなどの10mmと比べるとやはり強度が劣ります。
ペツルからは8mm、ヒルティからは10mmのボルトを使用したカットアンカーが販売されていました。
施工する際に穴を深く掘り過ぎるとクサビがちゃんと決まらず強度が低くなります。
グージョンボルトのようにある程度強度を確かめるということができないので、やはりどこか信頼度に劣る支点です。

特徴

■アルミ製もある。腐食している物は強度が信用ならない。
■基本的には下降用の支点。しかし、かつては前進用に施工された物もある。
■ボルトが緩んでいないかしっかり確認をする。
■現在は主流ではない

工業用を流用している信頼度の低いオールアンカー

悪名高き?オールアンカーです。細い心棒がボルト中央に飛び出ているので分かりやすい。
クライミング向けの販売は無く、工業用のアンカーを流用した物になります。
太さが10mmと8mmの物もあれば、アンカーの長さが長い短いもあります。
8mmの物はハンマー一振りで破断するなどの話もあり、強度としては最低です。

細い心棒を打ち込むと、先端がタコの足のように開きます。
アンカーボルトは太くとも心棒は数mmの太さなので、やはり強度としては信頼できません。
オールアンカーは見つけたらなるべく使わないようにしましょう。

特徴

■基本的に強度は保証されていない
■8mmと10mmの見分けが難しい
■サビていたら使わない方が良い
■サビてない10mmでも、極力使用しない方が良い

ペツルがかつて販売していたオールアンカー

引用:climbingboltsupplies社HP https://climbingboltsupplies.com/pages/expansion-bolts

ペツルのロングライフという商品。
構造としては工業用オールアンカーと変わらないが、素材が全てステンレスで、心棒が太いのが特徴。
ただし、柔らかい岩質には不適で欧州規格に準拠していないため、現在は製造されていない。
強度については参考資料が見当たりませんでした。いずれにせよ古い支点なので積極的には使いたくないところ。

特徴

■ステンレス製なので錆にくい(名前の由来であるロングライフ)
■適切に施工されている物で、岩質が硬ければ強度は高い(らしい)
■サビていたら使わない方が良い
■グージョンボルトのように強度をある程度確かめることが出来ない
■いずれにせよ、古い支点であることを認識しておく。

施行方法次第で強度が変わるRCCとリングボルト

かつては日本の登攀を支えてきたという物ですが、現代のスポートクライミングではやはり信頼度が落ちます。
リングボルトもRCCボルトも施工する穴の深さが超重要で、適切でないと強度がかなり落ちるといわれています。(むしろ全く効いていない場合すらあり得ます)

ちょっと触っただけで、音もなく壊れるリングボルトなどもあります。

特徴

■RCCはハンガーがしっかり岩に面していないと強度が落ちる
■どちらも前進用で、墜落の衝撃に耐えられないと考えた方が良い。
■リングボルトのリングが動かないぐらいサビついてたら要注意。

テコの原理の力に注意しないといけない、ハーケン類

基本的にハーケン類は、強度が保証されていないと思った方が良いです。
沢登りでは多用しますし、実際に墜落を止めてくれることもありますが、抜けてしまう事の方が多い。
画像のようにカラビナがテコになってしまう場合はスリングを入れるが、サビたハーケンはスリングを切断してしまう可能性もあります。

画像引用:ロストアローHP https://www.lostarrow.co.jp/store/

薄くて短いハーケン類は、欧州規格(EN569)に通っていないとBlackDiamondの取扱説明書に書いてあります。
アングルやロストアローと呼ばれる太くて長いハーケンだと、適切に打たれていれば欧州規格に通っているとのこと。
欧州規格EN569について詳しい試験方法は調べる事が出来ませんでしたが、こちらに概要が書いてあります。(海外リンクに飛びます→https://standards.iteh.ai/catalog/standards/cen/d045e260-f0ec-4be9-9672-326dad5add5e/en-569-2007)

特徴

■基本的に強度が保証されていないと思った方が良い
■使い方によってはいとも簡単に抜けてしまう事も

立木と呼ばれる、現地に生えている木

自然の岩に人工物の支点をなるべく残さないというのが基本です。
安全確保の為に人工物を使う事もありますが、木があるなら木を使うべきで、木が使える所には人工物の支点が無い事の方が多いです。

木を支点として使う注意点

■葉っぱが生えている”生きた木”を使う
■細すぎない木を使わない。最低でも腕の太さ以上
■木を使う前に、荷重をわざとかけてテストをする
■根っこに近い方が木の強度も高い事が多い。
■木もなるべく傷つけないように使いたい

その他の危ない工業用ボルトを流用した支点

これらも岩場でよく見かける支点です。
シャックルもアイボルトも強度は2~5kN程度。明らかに強度不足なのでできるだけ使いたくない支点です。

スリングでの終了点や中間支点の作り方

スリングでの中間支点と終了点の構築方法については、奥が深いので別の記事に詳しく書いています。

マルチピッチクライミングではスリングを使った終了点の作り方や、中間支点の作り方の知識は必須なのでぜひとも読んでくださいね。

【徹底解説】用途別スリング7選&クライミングでの使い方を分かりやすく解説!

 

ではまた!

ABOUT ME
岩と沢さん
元登山ガイドステージⅡ・元登山用品店のショップ店員だった僕。 主にクライミングギアとアルパイン向けの服の販売をしてました。8年間務めた公務員を退職し、長年の夢だった海外登山を果すほどの登山愛好家。 お問合せなどお待ちしております!