クライミング用カラビナを徹底解説【登山でも使えるオススメ18種類】

■カラビナの種類が多すぎて分からない・・
■登山やクライミングで使いやすいカラビナが欲しい!
クライミングや登山にはカラビナが必要ですが、細かな違いまで教えてくれる人はなかなか居ません。お店でもオススメされるがままです。
この記事では、「絶対に押さえておいた方が良いカラビナの情報」をまとめています。
この記事を読むと、カラビナ選びで失敗しません。
これだけは知っておきたい基礎知識【強度と形状と認証マーク】
カラビナの形は大きく分けて【変形D型】【HMS型】【オーバル型】



現在クライミングで最も使われているのは3種類のカラビナですの3種類の形を基本として、スクリューロック(安全環)とよばれるロック機構が付いたりします。
■変形D型
最も基本のカラビナ。軽い。様々な用途に使える。値段が安い。
■HMS型(洋ナシ型)
大きいので使いやすいが、重い。ビレイ(確保)や終了点に便利。アッセンダーなどの大型器具との相性もいい。
■オーバル型
幅が広いスリングやプーリーと相性がいい。
クライミング用カラビナの強度は約22kN


クライミング用カラビナには、写真の赤丸のあたりに、強度がkN表示で書いてあります。メジャーアクシス(後述)での強度が20kN~22kNが一般的です。約2トンまで耐えられます。強度の書いてないカラビナはおもちゃなので、登山やクライミングでは使わないようにしましょう。
【CE】【UIAA】マークのあるカラビナがクライミング用

クライミング用カラビナには、必ず「UIAA」または「CE」マークが付いています。
■UIAA
国際山岳連盟が定める安全基準規格に合格していることを示すマーク
■CEマーク
ヨーロッパの安全基準条件に合格していることを示すマーク
両方のマークがついていないカラビナは強度が保証されていないカラビナなので注意が必要です。アマゾンやメルカリにはマークの無いカラビナが安価で売ってありますが、使わないようにしてください。
使う向きによって強度が変わる

写真のカラビナには【メジャーアクシスは20kN・マイナーアクシスは7kN・オープンゲートは7kN】と書いてあります。




参考:ブラックダイヤモンドHP https://www.lostarrow.co.jp/blackdiamond/support/techinfo/TI2003_BD_Carabiner-Strength.html
カラビナはメジャーアクシスでの使い方が基本。ビレー用のHMS型(洋ナシ型)カラビナなど、全てのカラビナが上の通りになるわけでは無いので注意が必要です。
カラビナの名称は大きく分けて【ノーズ】【ゲート】【スパイン】
ゲートは大きく分けて5種類。それぞれの特徴


ゲートの種類は大きく分けて写真の5つです。 ④と⑤をまとめて「安全環付カラビナ」という人もいます。ゲートにはそれぞれ、メリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
①ワイヤーゲート | カラビナが軽く作れる。 ロープクリップがしやすい。 冬でも凍りにくい。 | ノーズが引っ掛かりやすい物がある。 |
②ストレートゲート | 支点で使った際に、ゲートが不意に開きにくい。 | ヌンチャクで使うと、ゲートが不意に開くことがある。(ウィップフラップ現象) |
③ベントゲート | ロープクリップがしやすい。 ゲートが大きく開く。 | 不意にゲートが開きやすい。 |
④オートロック(安全環付) | 自動でゲートのロックがかかる。 | 構造が複雑なので、岩や沢には向かない。 構造的に重くなりやすい。 |
⑤スクリューロック(安全環付) | 構造が単純で、オールマイティに使える。 | ロックを閉め忘れてしまう可能性がある。 |
登山でカラビナを使う方は、どれを選んでも大丈夫です。クライミングで使う方は、メリット・デメリットを踏まえたうえで選んだほうが良いですが、安全環付きカラビナはスクリューロックをオススメします。
■オートロックでもスクリューロックでも、必ず閉まっているかの確認はしないといけない。
■オートロックは構造が複雑な物が多く、砂を噛んだ時に困る場合がある。
■オートロックはスクリュータイプよりも重い物が多い。
■冬山では凍った時の対処が少し面倒な時がある。

オートロックは、中にサビや砂が入るとロックが自動で閉まらなくなります。ショートルートや人工壁向きだと思った方が良いです。


ワイヤーゲートのカラビナはオールマイティに使いやすいが、ノーズが引っ掛かりやすいことが欠点です。ワイヤーゲートはノーズの引っ掛かりが無い物を選びたい。
カラビナは大きいほど操作しやすいが、重くなる。
カラビナは【大きいカラビナ】と【小さいカラビナ】がある。


カラビナには同じ種類であっても大きさが違う物があります。登山で使うならどのサイズを選んでも困る事はありません。クライミングで使うなら、用途によってサイズを変えたほうが良いです。
■大きいタイプのカラビナ
多少重量は重くなるが操作がしやすい。ゲートが大きく開く。
グローブ操作をする冬山なら大きいタイプを選びたい。
カラビナ操作に慣れていない方も、大きいタイプのほうが良い。
■小さいタイプのカラビナ
軽い。ゲートの開きは小さい。
クライミングで少しでも重量を軽くしたい時や、小物をハーネスにぶら下げておくときに良い。
カラビナの大きさは【ゲートサイズ】で分かる

ゲートサイズ3.5cm

ゲートサイズ2.6cm

カラビナの大きさの目安は、ゲートサイズ〇〇mmを参考にすると良い。数字が大きくなるほどカラビナのサイズも大きくなります。
カラビナの重さの違い




ラビナ
大きいカラビナほど重くなり、小さいカラビナほど軽くなります。上の比較写真では、一番差のあるもので21gも重さが違います。登山ではそれほど気にしなくても大丈夫ですが、クライミングはカラビナの数が増えるので注意が必要です。
ゲートの種類によっても重さが変わってきます。ワイヤーゲートが軽く、安全環付は重いのが一般的です。
【変形D型カラビナ】おすすめ12選
カラビナは小物やスリングなどと一緒に使うことが一般的です。 軽量で扱いやすいカラビナをまとめました。
安全環の付いていないカラビナのオススメは上の通りです。ゲートサイズ(カラビナの大きさ)で選ぶか、重量で選ぶかがポイントです。
安全環の付いた変形D型カラビナのおすすめは上の通りです。重量はそれほど変わらないので、ゲートサイズ(カラビナの大きさ)と値段で決めても良いのかなと思います。
「ペツル/スピリット」

大きくて扱いやすいサイズ、開けやすいゲートで37g。持ってみると分かる驚きの軽さです。ゲートの作りは「さすがペツル」。非常に開けやすい&ロープクリップしやすいです。


強度 | 23-7-8(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 21mm |
重量 | 37g |
「カンプ/フォトン ストレートゲート」

フルサイズ(大きいサイズ)にも関わらず36gと非常に軽量。他のフルサイズのカラビナは、大体39~45g程度なのでとても軽いのが分かりますね。
強度 | 22-9-7(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 21mm |
重量 | 36g |
「ペツル/アンジュS」

「エーデルリッド/ミッション」

ストレートゲートにも関わらずワイヤーゲート並みに軽量。ワイヤーゲートには無いストレートゲート特有のゲートの軽さも特徴です。ノーズが小さいのでビレイデバイスのリリースホールとも相性バッチリ。


強度 | 20-7-7(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 21mm |
重量 | 29g |
「DMM/キメラ」

小型にも関わらず高強度。(メジャーアクシス23kN)ワイヤーゲートは引っ掛かりが無く、全体の仕上がりが良いです。



ゲートにベントがあるので段差があまりないです。メジャーアクシスになりやすいように、赤丸の箇所がくぼんでいます。細かい作りはさすがDMM。
強度 | 23-7-9(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 21mm |
重量 | 30g |
「カンプ/ダイオン」

ワイヤーゲートにも関わらずキーロックタイプ。ビレイデバイスのリリースホールと相性が良いです。ゲートサイズは26mmと広く、重量は33gと軽量です。オープンゲート荷重が11kNと高強度。 カラー展開も豊富で様々な用途に使いやすい。
強度 | 21-11-7(kN) |
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ゲートサイズ | 26mm |
重量 | 33g |
「BD/ホットフォージストレート」

「ペツル/エスエムディ」

カラビナに穴が空いているので落としたくない物のラッキングに便利です。タイブロックやマイクロトラクションと相性が良い。


引用:ペツル公式HP
強度 | 23-7-8(kN) |
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ゲートサイズ | 20mm |
重量 | 46g |
「ロックテリクス/ツオラミスクリュー」

「BD/ホットフォージスクリューゲート」

値段で迷ったらこれが間違いない。ペツルのスピリットと同じサイズで扱いやすいサイズです。
閉め忘れ防止の赤い印は無いですが、赤のマジックで書く人もいます。



強度 | 24-8-8(kN) |
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ゲートサイズ | 18mm |
重量 | 49g |
「ロックテリクス/フリーEVOスクリュー」

プーリー用のオーバルカラビナ。片方の丸みが抑えられてプーリーとの相性が良く作られています。


強度 | 25-8-7(kN) |
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ゲートサイズ | 20mm |
重量 | 75g |
「ロックテリクス/スーパーミニスクリュー」

何かと便利な小型の安全環カラビナ。強度が14kNしかないので、体重を支える程度で落下の衝撃には耐えられない。アックスやハンマーに使ったり、カメラの落下防止などに使うといいです。




強度 | メジャーアクシス14kN |
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ゲートサイズ | 15mm |
重量 | 28g |
【HMS型カラビナ】鎖場や自己確保、ビレーや終了点におすすめ
HMS型カラビナは変形D型よりも大きく、何かと汎用性が高いです。登山でいえば、鎖場や軽いロープワークで使う事もあります。クライミングであれば、終了点や確保などで使います。
HMS型(洋ナシ型)と変形D型の違い


HMS型と変形D型の違いは分かりにくいです。HMS型にはHの記載があるカラビナもあります。大きさは変形D型よりも大きいです。HMS型はその形から洋ナシ型とも呼ばれています。

HMS型は荷重方向が広く作られています。変形D型の荷重方向は頂点と底辺のみが基本です。
荷重方向が広いとビレーや終了点での使用に適しています。
終了点の確保側にもHMS型を使うのが理想


終了点のビレーポイント側はHMS型が望ましいです。 登ってくるセカンドのビレー方向が変わっても対応しやすいからです。他の器具を複数付けるのにも適しています。支点(ボルト)側は荷重方向がそんなに変わらないので、変形D型で大丈夫です。(オーバルのスクリューロックを勧める人もいます。)
ボルト側のカラビナを反転させる理由は2つ


ボルト側のカラビナを反転させるとスリングなどをクリップしやすいです。


安全環(スクリューロック)を使うのであれば、カラビナを反転させることで安全環が振動などで落ちて解除されにくいというメリットもあります。
【HMS型カラビナ】おすすめ4選
用途の多いカラビナですが、自分の持っているスキルに合わせて1個~3個程度持っておくことをオススメします。
「ペツル/ロシャ」とにかく軽さを追求したいアルパイン向け

HMS型の中では最軽量45g。1gでも軽くしたいアルパイン向け。それでいてゲートサイズは20mmなので、使いやすさを犠牲にしていない。2024年に発売されたばかりの注目のカラビナです。
強度 | 20-7-6(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 20mm |
重量 | 45g |
「ペツル/アタッシュ」ゲートサイズと重量のバランスがとれた

ゲートサイズと重量のバランスが最もとれていてオススメ。HMS型はもともとムンターヒッチで懸垂下降が出来るように作られた物で、わざと大きく作られたものが多い。アタッシュのサイズは、やや小ぶりながらムンターヒッチでの懸垂下降も出来るサイズ。
ビレーポイントでの使用にも適しています。岩・沢・雪山・登山、どのシーンでも間違いなく活躍してくれるカラビナです。



強度 | 21-7-6(kN) |
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ゲートサイズ | 23mm |
重量 | 58g |
「BD/ベイパーロックスクリューゲート」やや小ぶりで中級者向け

アタッシュの対抗馬となり得ると個人的に思っているカラビナ重量は52gとアタッシュよりも軽くより小ぶりです。ゲートサイズは20㎜とかなり狭めです。
9.4mmまでのロープでムンターヒッチが可能ではありますが、操作に慣れた人向け。太いロープは、ムンターヒッチの結び目がカラビナ内で反転するかどうかを確認する必要があります。ビレーポイント等に良いです。値段も安いのが特徴。




強度 | 21-7-8(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 20mm |
重量 | 52g |
「BD/ロックロックスクリューゲート」大型で扱いやすい

1つは大型のHMS型カラビナを持っておきたいという方にオススメなのが「ロックロックスクリューゲート」です。大型であればスパインが握りやすいので、小型のアッセンダーとも相性が良いです。重量は86gと重く感じるかもしれませんが、このサイズならば平均値な重さです。



強度 | 24-8-8(kN) |
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ゲートサイズ | 24mm |
重量 | 86g |
【反転防止付きHMS型】確保器におすすめ5選

反転防止とは、カラビナの下の方についているクリップのことですね。(写真の赤〇)ビレー用のHMS型カラビナにはこの反転防止が付いている物が多い。


反転防止が付いていることによって、ビレイ時にカラビナが反転しません。ビレーや懸垂下降用に必ず一個は反転防止カラビナを持っておきましょう。
「ペツル/アタッシュバー」

2024年新型のアタッシュは、後付けで反転防止が可能。最軽量級のカラビナながら汎用性の高いカラビナとなりました。不意にロックが空かないので安全性も高い。
強度 | 21-7-6(kN) |
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ゲートサイズ | 23mm |
重量 | 63g |
「エーデルリッド/HMSストライクFGⅡカラビナ」

なんといっても軽量(62g)です。ゲートサイズが他のHMS型よりも狭くなりますが、それでも21mmあるのでクライミングでは問題ありません。
強度 | 22-8-7(kN) |
---|---|
ゲートサイズ | 21mm |
重量 | 62g |
「エーデルリッド/HMSブレットプルーフスクリューFGⅡ」

摩耗が激しくなる箇所にステンレスを加えて補強してあります。多少重くなりますが、ゲートサイズも広くて扱いやすく、カラビナの寿命も延びます。
強度 | 25-9-9(kN) |
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ゲートサイズ | 24mm |
重量 | 84g |
「BD/グリッドロックスクリューゲート」

反転防止が不意に開くことが無いのが一番の特徴。ゲートを開くと反転防止も一緒に開くので、ひと手間を減らすことが出来ます。バネタイプの反転防止よりも耐久性があります。 やや重いことがデメリットです。



強度 | 22-8-7(kN) |
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ゲートサイズ | 21mm |
重量 | 76g |
「ロックテリクス/HMSミディスクリューAT」

お値段は安いですが、品質はしっかりしているので安心してお使い頂けます。スクリューロックが閉まっていなければ恐竜のマークでお知らせしてくれます。軽くてゲートサイズも広いのでおすすめです。
強度 | 22-8-7(kN) |
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ゲートサイズ | 22mm |
重量 | 75g |
まとめ
奥の深いカラビナについて、クライミングに的を絞ってまとめてみました。
※世の中には安くて品質の悪いカラビナもありますが、ここでは紹介していません。

こちらの記事ではスリングについて詳しく解説しています。
登山でもクライミングでも、スリングは必須装備なのでぜひ読んでみてください。

これからクライミングを始める方にも必要な「ビレイデバイス」(確保器の事ですね。)
それぞれ特徴があるのでこちらの記事でまとめています。
ではまた!