- ハイキング用のザックを持っているけれど、アルパインクライミングで使いにくい・・・
- アルパイン向けザックとハイキング向けザックの違いが分からない。
- 沢登りやスキーのザックは何が違うのか?
登山靴とクライミングシューズが分かれているように、ザックも用途に合わせた選び方があります。ザック選びを間違えてしまうと「クライミングでも使いたかったのに、使いにくい!」という状況に陥る人を沢山みてきました。
そこで今回は、元登山ガイドステージⅡ&元登山用品店に勤めていた僕が、アルパイン向けとハイキング向けザックの特徴を徹底的に解説をします!
メーカーの展示会などで数多くのザックを見てきましたし、設計思想などもよく聞いてきました。
このページを読むと、アルパイン向け、ハイキング向け、沢登り向け、スキー向けザックの特徴が大まかに分かるようになります。
ザック選びで間違う事が無く、自分の用途に合った物を適切に選べるようになりますので、最後まで読んで頂ければと思います。
■アルパインザックは雪が付着しやすいかどうかを重点的に選ぶといい。
■ザックの外側にポケットなどの便利装備が無い方が、アルパインでは使いやすい。
■クライミングで使うなら、ある程度の生地の厚さがある方が良い!
ザックの種類が多すぎるので紹介する特徴はあくまで一例ではありますが、選び方の基準にして頂ければなと思います!
(質問があればコメントかメッセージお待ちしております!)
ハイキング向けザックがアルパインで使いにくい理由4選
ハイキング向けがアルパインで使えないワケでは無いですが、使いにくい理由があります。
使いにくい理由を、先ずはおおまかに4つに絞って解説していきますので、アルパインザックの選ぶ基準にして頂ければと思います!
①背面は雪が付着しないように、すっきり滑らか

ハイキングザックは、背負い心地が良くなるような工夫がしてある。
背中に汗をかいても乾きやすいようにメッシュになっていたり、わざと凹凸が作って合って換気をうながしている物が多い。
その代わりに、ザックとしては構造的に重たくなるし、雪が付着するとメッシュの奥まで入り込んで取れなくなってしまう。
アルパイン向けザックは滑らかに作ってある。
背負い心地よりも、雪が付着しにくく、軽量に作られている。
- ▲滑らかの中に凹凸が作ってある。基本は滑らか
- ▲中身はただのウレタン。汗の事なんか考えない
右のアルパインザックは白い部分は破れて中身が見えています。
中身はただのウレタンでメッシュなどはありません。
雪は付着しても奥に入り込まないし、構造的に軽量です。
■ハイキング向けは背負い心地こそ良いが、雪が付着すると奥まで入り込んで大変。無駄に重くなる。
②アルパイン向けは背面長が変えられない
- ▲背面長が長い時
- ▲背面長が短い時。構造が複雑
- ▲ハイキング向けザックは背面長や腰ベルトが変えられる物が多い
- ▲アルパインザックは構造が単純
ハイキング向けザックは背面長が変えられるものが多い。
体型に合わせることが出来るので、重い荷物でも快適な背負い心地になる。
背面長が「S/M」「M/L」のようにサイズ展開されているものが多いので、自分の背中にあった物を選びやすいようになっている。
しかし、構造的に複雑になるので複雑な所に雪が入り込む。
- ▲背面長がワンサイズ展開の例
- ▲背面長の測り方。僕は大体52cm程度
- ▲サイズ展開があると選びやすい
アルパインザックはワンサイズ販売の物が多い。
「背面長〇センチ」や「背面長:ワンサイズ」という感じで売られていて、小柄な女性や男性は背面がどうもしっくりこないということも多い。
そういった場合は、サイズ展開のあるアルパインザックを選ぶといい。
多少の背面の誤差はそういうものだと割り切るしかない。
■ハイキング向けは背面長が複雑な造りになりがちで、雪が入り込んだり、構造的にザックが重くなりがち。
③腰ベルトが取り外せるので、ハーネスにも対応可能
- ▲腰ベルトが外せる
- ▲腰ベルトは縫い付けてあるので外せない
- ▲ハイキングはポケット、アルパインはギアラックのものが多い。
アルパイン向けザックは腰ベルトが取り外せるものが多い。
ハーネスやクライミングギアと干渉させないために腰ベルトが外せます。
特に、小型から中型のザック(10L~40L程度)は腰ベルトが外せるザックが多い。
大型(50L以上)にも腰ベルトの外せるモデルはありますが、重たい荷物やスキーなどを長時間背負うのなら腰ベルトはしっかりしている物の方が楽です。
ハイキング向けは腰ベルトが取り外せない物が多い。
腰ベルトはしっかりした造りのものが多く、ポケットなどの便利機能が付いていることが多いです。
■ハイキング向けは腰ベルトが外せない物が多いので、ハーネスやクライミングギアと干渉して使いづらい。

意外と知らない人が多いのが、腰ベルトを後ろでとめるという方法。
こうする事でハーネスなどに干渉しないので使いやすい。
ただし、長時間すると無理に曲げている個所にダメージはあると思うのでここぞという時に使いたい。
④前面の作りが必要最低限で、スッキリしているのがアルパイン

ハイキング向けザックは全面に便利なポケットやベルトが多い。
水筒を入れるサイドポケットが付いていたり、上着などを一時的に収納するメッシュポケットがある物が多い。
ハイキングでは便利な装備なので欲しい機能ではありますが、アルパインでは雪が入り込んだり枝や引っ掛かったりする。
アルパイン向けザックはシンプルなものが多い。
ザックの全面にポケットがあると枝や岩に引っ掛かるし、マルチピッチを登っているときにポケットに水筒を入れておくと落としてしまう危険もあります。
■ハイキング向け前面やサイドにメッシュポケットのある物が多い。雪が入り込んだり、クライミング時に水筒などを落としてしまう可能性があり危険。
アルパイン向けザックの特徴
ハイキング向けとアルパイン向けのおおまかな違いについて説明をしました。
ここからは、アルパイン向けザックの中でも「こういった特徴がある」というのをご紹介していきます。
不要なパーツを取り外せるほうが、使える場面が増えるので良い
- ▲腰ベルト・雨蓋・フレームを取り外した
- ▲紐と雨蓋をとにかく外した
アルパインザックを軽量化したい時や、少しでも何かに引っ掛かるものを減らしたい時のためにパーツが取り外せるようになっています。
- クライミングの妨げにならないように、紐類など引っ掛かる物を減らしたい
- 容量を減らして重量を軽くしたいので、雨蓋はいらない
- 中の荷物をスムーズに取り出したいので雨蓋を外したり付けたりしたい
- ムーブの妨げにならないように、ザックのフレームが取り外したい
- ワカンやスコップを装着したいので、ザックの外側に紐類が欲しい
- 荷物が重くなりがちな冬山は、腰ベルトがしっかりしている方が楽なときもある
- 雪の侵入をふせぐためにも、雨蓋が欲しい
アックスホルダーは2つあった方が良い

最近のアルパインザックは、アックスホルダー2つが当然となってきました。
写真のアックスホルダーは紐タイプの物で昔からあるタイプです。
最近はメタルフックが主流です。
- ▲出展:ロストアロー公式HP
- ▲出典:エクスペド公式HP
メタルフックのほうが取り付けもスピーディで、アックスの形状を選ばないですね。
アイスクライミングで使われるようなハンマーもアッズも無いアックス(写真左)は、紐タイプだと固定できないので、メタルフックが良いです。
メタルフックはゴムの伸縮が必要なので寿命は短く、アックス以外の物(ストックやスコップなど)の固定には形状を選ぶというデメリットもあります。
ザックの生地は使う場面によって選んだ方が良い

アルパインザックはザックの生地が薄く作られている物が多いです。
軽量化の為ですね。生地が薄くともダイニーマなどの丈夫な生地を使っている物も多いですが、どうしても厚い生地よりは耐久性に劣ります。
- ▲例えばこのマットを入れると
- ▲生地が薄いとうっすら文字が見えます。
- ▲生地が厚いともちろん文字は見えません。
薄い生地のザックに荷物を入れてみると、中の荷物がうっすら見えます。
厚い生地の物は当然中の荷物が見えたりはしません。
岩に積極的にこすりつけたりするクライミングには生地の厚いザックがオススメ!
役割の違う腰ベルトの使い道3選
- ▲上からハイキング、アルパイン、スキー、小型クライミングザック
- ▲腰パッドの厚みの違い。上にいくほど厚い
一概に腰ベルトといっても、使い道は様々です。
パッドの厚みと形状で、その使用用途を考えてみると分かりやすいです。
■大型ハイキングの腰ベルト
→荷物を腰で持つために湾曲していて、パッドも厚い。
■中型アルパイン向けザック
→重い荷物も背負えるように厚め。取り外せる。
■中型スキーザック
→動きを妨げない薄めのパッド。スキーの動作の邪魔にならない。
■小型アルパインザック
→クライミングムーブでザックが横にブレ無いためだけの紐。
腰ベルトは重い荷物を背負うためだけの物ではないという事が分かりますね。
アルパインザックになるほど、荷物を背負うためというよりもクライミングやスキーの動きを身体にフィットさせる目的になります。(重量があるほどザックが降られちゃいますからね)
バックカントリー向けは、背面長が大きく開く方が良い
- ▲スキー向けザック
- ▲背面がバカッと開く。
スキー板を担いでいる時は雨蓋を開けにくいので、背面からアクセスできる方が圧倒的に使いやすいです。
デメリットとしては、多少背負い心地が悪くなる&ザックが重くなるということです。
奥が深いので、また詳しくご説明予定!
【番外編】結局沢登りで使うザックは何が良いの?2種類比較!

沢登りでは大きく分けて、防水性の無いザック、完全防水のザックと横にメッシュのある水はけのよいザックが使われます。
今回は完全防水のザックと、水はけのよいザックのメリット・デメリットをご紹介!
完全防水タイプザックのメリット・デメリット
- ▲ロールトップなので防水性が高い
- ▲構造的には袋状となっている
- ▲生地に穴が空いたら終わりなので、丈夫な生地の物の方が良い。
構造的には登山で使われる防水のドライサックとほぼ同じですね。
大型のドライサックにショルダーハーネスが付いた物とイメージすると分かりやすい。
防水性は高いが、濡れたロープを中に収納すると結局中が濡れてしまったりする。
泳ぎが続くと浸水することもあるので、結局荷物は防水処置した方が良い。
- 中の荷物が濡れにくい安心感
- 背負い心地があまりよくない
- 濡れたロープなどを収納すると、結局中が濡れちゃう。
- 家に帰ってからの片付けが面倒
- 荷物が少なすぎるとロールトップが巻きにくい
ロープを誰かに持ってもらうなら、中の荷物が濡れないのでとても便利な防水ザック。
もくしはロープを使わない沢登りもいいですね。
防水ゆえにザックの中身が乾きにくいので、お家に帰ってからの片付けに手間がかかるのが最大のデメリットです。
メッシュタイプのメリット・デメリット2選
- ▲先輩からもらったかなり古いキャニオニングバック
- ▲サイドや底部にメッシュが使われている。
- ▲2022年に発売されたペツルのヤラガイド
- ▲ロープバッグとしても使いやすい構造
水が入ってもすぐに排出されるタイプ。
荷物は防水スタッフサックなどで個別に防水処置させる必要があります。
- 少ない荷物から多い荷物に対応しやすい
- 家に帰ってからの片付けが楽
- 荷物の防水処置をしっかりする必要がある
- 荷物の外付けがしにくい
デメリットに荷物の外付けがしにくいと書きましたが、外付けをする事は基本的に無いと思うのでそれほどデメリットに感じる人は少ないと思います。
ザックの生地にTPUという非常に丈夫な物を使っているのもポイントです。
ペツルのヤラガイドはまだ沢で使ってないので、しっかり使ってからレビューします!
オススメのアルパインザックレビュー
アルパインザックの大きな違いについて簡単にご説明しました。
こういった特徴を知っておくと、自分の用途に合わせたザックを選びやすくなりますよね。
クライミング&冬山登山向けザック

