クライミング・沢登り用品の選び方

マルチピッチ向けビレイデバイスの選び方【4商品を徹底比較!】

マルチピッチに行くならば、マルチピッチ向けビレイデバイスは必須装備!
でも、どれも似たような形だし、大きな違いなんて無いような気がしますよね。

ここでは、元ガイド資格保有&元登山用品店に勤めていた&
週に一度は必ずクライミングやアルパインに行く生粋の登山好きな僕が
4つのビデイレバイスを実際に山でテストした結果をレビューします!

初心者にオススメなのは圧倒的にペツルのルベルソ!
→圧倒的軽さ&ロープ幅の対応が広いのでまず間違いない

中級者にはエーデルリッドのメガジュルもオススメ!
→リードクライマーの半オートブレーキ機能がうれしい

8mm程度の細いロープを使う人はATCアルパインガイドがオススメ!
ロープスロット内でのロープのキンクを防止できる

そもそもマルチピッチ向けビレーデバイスとは?

そもそもマルチピッチ向けのビレーデバイスとは何でしょうか。
ショートルート向けとの違いを見ながら学んでいきましょう。

ショートルート向けとの違いと各部名称!

←がマルチピッチ向け、→がショートルート向けビデイレバイス!

この二つの違い、上と下の穴の有無ですね!

①アタッチメントポイント
②ロープスロット
③ブレーキグルーブ
④ボディ
⑤ケーブル
⑥リリースホール

各部名称はこんな感じです!
①と⑥の有無がショートルート向けとの大きな違い!

具体的な使い方を見ていきましょう!

セカンドをビレーする方法

マルチピッチを登っている登っているとします。
リードクライマーは、終了点について、セカンドをビレーしないといけません。

この時、マルチピッチ向けビレーデバイスが活躍します!

セカンドをビレーする具体的方法

終了点の支点を利用して、ビレイデバイスをセットした写真です!
ビレイデバイスのアタッチメントポイントを使ってビレーしていますね!

こうする事により、次のメリットがあります!

セカンドが落ちた時に半自動ブレーキがかかる
→セカンドが見えない場合でもブレーキがかかるので安心

セカンドが落ちた荷重が終了点にかかる
→救出や手助けの為にビレーヤーが自由に動ける

ショートルート向けのビレイデバイスでもマルチピッチを登ることは出来ます。
しかし、上にあげた二つのメリットはマルチピッチ向けビレイデバイスのみ

マルチピッチではマルチピッチ向けビデイレバイスを使うのが無難で安全!

使い方は、こちらの動画がとても分かりやすいです!

セカンドが落ちた時の解除のやり方もビデオ内で紹介されていますが、
実際の現場で、安全に行うのはかなり難しいです。
失敗すると、セカンドクライマーを落としてしまいます

初心者の内は、無理に解除をするのではなく、セカンドクライマーに頑張って登ってもらう方が安全です!

リードをビレーする方法はどちらも基本的には同じ!

ショートルート向けビデイレバイス「リードをビレーする」使い方
マルチピッチ向けビデイレバイス「リードをビレーする」使い方

 

画像の引用:ペツル ルベルソ・ベルソ 取扱説明書
https://www.alteria.co.jp/sport/reverso/

マルチピッチ向けも、ショートルート向けも、リード(先に登る人)をビレー(確保)する方法は全く同じです。

ビレイデバイスによっては多少の違いがある場合があるので、
取扱説明書をしっかり読みましょう!

4つを徹底比較!

製品名値段重量ロープ操作対応ロープ
①BD/ATC
ATCアルパインガイド
3,630円73g細いロープは〇6.9~9mm
②エーデルリッド/メガジュル5,480円65g少しコツが要る7.8~10.5mm
③BD/ATCガイド3,630円89g太いロープもOK8.1~11mm
④ペツル/ルベルソ4,400円57gバランスが良い7.1~10.5mm

それぞれ、対応ロープ幅が変わってきます。
ご自身が使っているロープ幅を確認してみてくださいね!

細いロープはどうしても制動力が弱く、ビレイも懸垂下降もロープが流れやすいです。
(対応ロープ幅内であっても、制動力は大きく変わる場合があります)

本チャンに行く前に、しっかりとビレイデバイスとロープの相性を確認してくださいね!

初心者にオススメなのはペツルのルベルソ!

←BDのATCガイド、→ペツルのルベルソ

僕がこれまでたくさん使ってきたのはこの2つ。
どちらも似た形状だが、僕のオススメはペツルのルベルソだ!

ロープスロットはペツルの方がやや狭い。

ロープスロットの大きさが変わることで、
■対応するロープの太さ
■ロープの繰り出しやすさ
が変わる。

製品名重量対応ロープ
③BD/ATCガイド89g8.1~11mm
④ペツル/ルベルソ57g7.1~10.5mm

ルベルソの方が圧倒的に軽く、対応するロープ幅も広い。
最近の「細くて丈夫」というロープ事情から、11mmはあまり使わない。

ロープの繰り出しやすさ、懸垂下降のやりやすさなんかも、殆ど変わらない。
(後述しますが、細いロープを使用するならATCアルパインガイドが良い)

アタッチメントポイントの向きの違いもポイント

この二つの大きな違いでもあるアタッチメントポイントの向きの違い。
ルベルソは横向き、ATCガイドは縦向き。
終了点でセカンドクライマーをビレーするときに、ルベルソとATCガイドでは
ビレイデバイスの向きが変わってくる。

なんとなく、正面を向いている方が操作はしやすそうだが、
ビレーヤーが登ってくるのは正面というよりも、右や左側から登ってくる方が多い。
ATCガイドは、壁側にロープを擦りやすいというデメリットもある。

小さな違いだが、ビレーの操作のしやすさはルベルソ!

リリースホールの穴の形状はどちらも殆ど変わらない。
僕が持っているのはルベルソ4で、最新のルベルソ5はリリースホールが少し小さくなった。
(ATCガイドと同じぐらい)

リリースホールが大きい方がカラビナは入りやすいが、小さい方がリリースは行いやすい。
しっかりとリリースホールに合う形状のカラビナを持っていくのが大事!

まとめると、

ルベルソは圧倒的に軽い!
■アタッチメントポイントの向きが、ビレーが行いやすい向き。
■対応するロープ幅も広い!
■ATCガイドと比べて、ロープ操作もそん色なく行いやすい。

以上の理由から、初心者にも、中級者以上にもオススメなのはペツルのルベルソです!

ペツル(Petzl)  ルベルソ D017AA

細いロープを使用する人にはATCアルパインガイド!

細いロープ(8mm前後)を使用する人には、ATCアルパインガイドがオススメ!
ロープがロープスロット内で食い込む可能性があるかだ!
具体的に見ていきましょう。

←がATCアルパインガイド、→がATCガイド

ATCガイドを、軽量化&コンパクトにしたのがATCアルパインガイドだ!

製品名重量対応ロープ
①BD/ATC
ATCアルパインガイド
73g6.9~9mm
③BD/ATCガイド89g8.1~11mm

ATCアルパインガイドは、対応するロープ幅の上限が9mm。
つまりこれは、シングルロープをそもそも想定していない
ダブルロープ、もしくはツインロープ使用が前提ということだ!

ロープが食い込んだ状態

上の写真は、ルベルソで8mmロープを使用している時の写真。

セカンドクライマーをビレーしていると、
セカンドクライマー側のロープがビレー側の方に食い込むという事がある。
(特に、濡れたロープではこういった現象がたびたび起きる。)

ATCアルパインガイドはロープスロットが一番小さい。

ATCアルパインガイドは細いロープでも、ロープスロット内でロープが食い込みにくい!
細いロープを使う人にはATCアルパインガイドがオススメ。

僕は、8.6~9mmのダブルロープを使用することが多い。
そのぐらいの太さなら、ルベルソでも食い込んだことはないので大丈夫です!

リリースホールも小さめ

ATCアルパインガイドはリリースホールも一番小さい。
しっかりと形状にあったカラビナを持っていこう!

まとめると、

■ルベルソなどは、8mm前後の細いロープを使うとロープが食い込む
ATCアルパインガイドは食い込みにくい。
細いロープでの懸垂下降にも、相性が良い。
■細いロープを使う人はATCアルパインガイドがオススメ!

使用するロープとビレイデバイスは、
本チャンに行く前にしっかりと相性テストしてから行きましょう!

(C)ブラックダイヤモンド・BD14017001・ATCアルパインガイド(エンビーグリーン)【クライミング】【確保器】【キャンプ&クライミング館】

中級者にはメガジュルがオススメ!

メガジュルには大きな特徴がある。
リードクライマーのフォールに、半自動ブレーキがかかる。

←がエーデルリッドのメガジュル、→がルベルソ

見た目からしても、メガジュルはとても特徴的!

ロープスロットも小さい
製品名値段重量対応ロープ
②エーデルリッド/メガジュル5,480円65g7.8~10.5mm
④ペツル/ルベルソ4,400円57g7.1~10.5mm

メガジュルは値段が大きい!
対応ロープ幅はルベルソと大きく変わらないが、メガジュルはビレイ操作に少しコツがいる。

リードクライマーのビレー。基本的なポジション

リードクライマーをビレーするときに、特徴的な緑のパーツに親指を引っ掛けておかなければならない。
ロープスロットは小さいがロープの繰り出しはスムーズに行える。

しかし、右手のポジションは固定されてしまうので、他のビレイデバイスのように自由な動きは出来ない。
結果、ロープの繰り出しが少なくなってしまう。

右手を離すことで、食い込み部分にカラビナが入り込んで、リードクライマーの滑落が半自動で止まる!
(実際には、ビレー側ロープの手は離してはいけないです!)


引用元:マジックマウンテンHP メガジュル取扱説明書
http://www.magic-mountain.jp/item/support/torisetu.html

親指を緑のパーツにあてとかないと、意図せずカラビナが食い込んでロープが止まってしまう。
ビレーには慣れが必要なので「初心者にはオススメできない」というのが正直な感想。
取扱説明書をしっかり読みましょう!

自分がリードクライマーで落ちたという仮想シミュレーション

8.3mmのロープでも、バッチリと止まります!
(実際には、ビレー側ロープの手は離してはいけない)

まとめると、

他にはない、リードクライマーの半自動ブレーキは便利!
■ビレーにコツがいる
■ロープの繰り出しは少なくなるので、ビレーヤーの技量も要る

ビレー操作に慣れており、メガジュルの特性をしっかりと知ってる人にはとってもオススメです!
バンバン壁を登りに行く中級者にオススメです!

エーデルリッド (Edelrid)  メガジュル 717840006630

大事なのはビレイデバイスよりもビレーヤーの技量!?

こんなことを言ってしまっては、元も子も無いのかもしれませんが・・・(笑)

大事なのはビレーヤーの技量(ビレー技術)です!
是非、こちらのペツルの動画を見てみてくださいね。

 

その他、マルチピッチに必要な装備についてこちらの記事で詳しく載せています!↓

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ABOUT ME
岩と沢さん
元登山ガイドステージⅡ・元登山用品店のショップ店員だった僕。 主にクライミングギアとアルパイン向けの服の販売をしてました。8年間務めた公務員を退職し、長年の夢だった海外登山を果すほどの登山愛好家。 お問合せなどお待ちしております!