【低体温症を防ぐ】体温を下げない4箇条&レスキューを呼ぶタイミング、持つべき道具を解説。
雪山や夏の高山・沢登りで起こりうる低体温症。低体温症は登山における死亡原因の2-3位を占めており、無視できません。低体温症の治療は非常に難しいので、当記事では予防にフォーカスしています。
この記事では、登山で気を付けるべきポイント、レスキュー要請の判断、体温を回復させる方法とその道具について解説します。低体温症を予防し、楽しく雪山に登れる人が増えると嬉しいです。

僕は医師では無いので、以下の書籍や動画を参考にしたり、各講習会や現役医師への質問などを頼りに記事を書きました。
・国立登山研修所:第7章 登山の医学
・国立登山研修所:新・高みへのステップ
・山岳医療救助機構:20分で学ぶ「低体温症」
・山岳Dr.大城の20分ファーストエイド口座!プラティパス湯たんぽ~低体温症youtube
低体温症は登山における死亡原因の2位-3位

低体温症で亡くなられる方は多いです。2009年7月トムラウシや富士山では、大勢の方が低体温症によって亡くなられています。富士山では20代の方も亡くなられており、低体温症に季節と年齢は関係ないことがわかります。
>>引用:山と渓谷社(なぜ夏の富士山で死ぬのか。過去の事例から考える)
高山(季節を問わず)に行かれる方や、冬山に行かれる方は、常に低体温症のリスクがある点に留意する必要があります。
熱を失う4つのメカニズムを知る

山岳は平地と違い、体温が奪われるリスクが大きいです。熱を失うメカニズムを知り、どう対処するかが重要です。熱を失う要因は以下のとおりです。対処方法については「体温を回復させる4箇条」にて後述します。
- 蒸発:汗や呼吸によって体温が逃げる
- 放射:じっとしていても体温が逃げる
- 対流:風が吹くことで体温が逃げる
- 伝導:接触する物に熱が奪われる
寒さに強くなるには?
低体温症の講習会にて、医師から説明を受けたことを下記に記します。
人間の身体で、寒い時に体の熱を作るものは「骨格筋」と「褐色脂肪組織」だけです。褐色脂肪組織は脂肪内にありますが、割合は人によって異なります。寒さに強い人で3割、普通の人は1割程度です。耐寒訓練などを行うと、褐色脂肪組織は増えると言われています。
ただの脂肪は断熱効果にはなるけど、熱は生みません。熱の生産に一番効果があるのは筋肉をつけることです。やせすぎないことも大事です。
重症度を判断して、レスキュー要請できるようにする

重症度は「軽度」から「重度」の4段階です。軽度から中度への移り変わりでは「震えがあるか」「意識が正常か」が重要な観察ポイントです。震えがあり、意識が正常だと軽度です。震えがなくなり、意識に異常が出ると中度です。体内のエネルギーが枯渇していると十分に震えることができないので、観察は難しいことを理解しておきましょう。
低体温症での救助要請は遅れがちだと言われています。中度以上になると突然意識を失うことも多く、自分でレスキューを呼べないからです。中度以上になるとセルフレスキューも極めて難しく、レスキューデスの多い病気だと言われています。要請のタイミングが重要です。
低体温症を中度以上にしてはいけない
中度以上は自力での回復が困難であり、突然悪化する可能性があります。レスキューには医学的な知識が必要で、間違ったことを行うとレスキューデスに繋がります。この記事では「中度以上にしない、予防的観点」に重点を置いて説明しています。
レスキューを要請するタイミング

最低限の自助努力は必要ですが、レスキューを要請しなくても、救急隊や医師に電話連絡して指導を伺ったり従うことも大事です。現場での状況によってレスキュー要請を行うタイミングは異なると思いますが、以下の3点を参考にしてください。
- 「中度」以上は速やかに救助要請。命のリスクが高まっています。
- 「軽度」でも「食べる・隔離・保温・加温」が出来ない場合は救助要請する。
- 「軽度」の処置を開始して、1時間以内に改善が無ければ救助要請する。
【食べる・隔離・保温・加温】体温を回復させる4箇条
体温を回復させる応急処置では「食べる・隔離・保温・加温」を行います。中でも「隔離・保温・加温」が重要です。体温を回復させる方法について解説します。
【食べる】行動食選びが重要
炭水化物(糖質)はグリコーゲンとなり、体が震えるためのエネルギーとなります。むせない場合は温かくてカロリーのある飲み物(おしるこなど)を飲ませると良いです。ただし、食べても運動しても熱の生産には限界があるので、重要なのは「隔離・保温・加温」です。無理に食べさせてもいけません。
>>【栄養学で解説】行動食の選び方とおすすめ|炭水化物(糖質)が重要【スーパーで買える】
【隔離】ツェルトなどで身を守る

雨・雪・風から身を守るために重要です。カッパを着て、ツェルトなどを利用するか、雪洞を掘りましょう。風の当たりにくい場所に移動することも大切です。地面からも体温を奪われるので、設置する場所にはザックやマットを使ってください。
【保温】マフラーや手袋も着こむ
防寒着があれば着こみ、マフラーや手袋なども全て装着します。隔離ができているなら、濡れた衣類を乾いた物に着替えましょう。エマージェンシーブランケットもあれば使いましょう。
【加温】即席の湯たんぽは低体温症の予防と改善に効果有り

低体温症に対して予防と改善に非常に有効だと言われている方法です。耐熱温度のあるソフトボトル(プラティパスやナルゲンなど)に、なるべく温かいお湯をいれて、胸に当てます。即席湯たんぽの完成です。お湯はなるべく熱い方が良く、やけどさせないためにタオルに包んだり、衣類の上から使用します。
低体温症予防に効果的な登山用品
現場でセルフレスキューをするために、登山道具が成功の可否を担っているものは隔離と加温です。
サバイバルシェルター:風が入り込みにくい

大きな袋状な形をしたシェルターです。ツェルトと違い袋状になっているので、風が入り込みにくく、使いやすくなっています。
動画で紹介しているのは4人用です。コンパクトな2人用もあります。さらにコンパクトさを求めるなら、ウルトラライトサバイバルシェルターという商品があります。
ツェルト:簡易テントにもなり万能



簡易テントにもなりますし、いざというときは上から被るだけでも効果が高いです。伝導(地面などに身体の熱を奪われる)対策として、お尻の下にはザックやマットを敷く事がポイントです。昔から販売されているアライテントのビバークツェルトがおすすめです。




ツェルトは各社から販売されていますが、最もおすすめはファイントラックのツェルト2ロングです。両側にファスナーが付いているので、間違えて風が入る向きに入り口側を設置しても反対側から出入りできます。タープとしても使えるので、別に買うよりも結果的に安く済みます。
湯たんぽ①:プラティパスはおすすめ。じょうごも必要


プラティパスは湯たんぽに効果的です。お湯を入れて無駄な空気を抜くことで、身体に当たる面積を広げられるからです。口が小さいので、100均などで折りたたみのじょうごと一緒に使うことをおすすめします。プラティパスは耐熱温度90℃なので、暑いお湯でも大丈夫です。
湯たんぽ②:ナルゲンはじょうごが要らない


ナルゲンのソフトボトルは口が広く、暑いお湯を入れる際でもじょうごは必要ありません。耐熱温度も104℃と高いので安心です。収納サイズが大きくなる点と、プラティパスに比べて身体に当たる面積は小さい点がデメリットです。
ジェットボイル:素早く湯を沸かしたいなら



寒い環境下で素早くお湯を作りたいならジェットボイルがおすすめです。僕が-5度のツェルト内で行った検証では、ジェットボイルは2~4分程度でお湯を沸かせました。ジェットボイル以外のバーナーは8分程度時間が掛かるものがありました。以下の記事で詳しく解説しています。
>>【ジェットボイルはおすすめ】他社バーナーと比較!便利な使い方や裏技、低温での実験を解説




バーナーに限らず、軽さとコンパクトさは別の何かを犠牲にしていることが多いです。僕は低体温のリスクがある山行にはジェットボイルを持って行きます。ジェットボイルで最もコンパクトなのはジップとマイクロモです。
ジェットボイルのジップは着火装置が無く低温に少し弱いです。マイクロモは着火装置が付いており、低温に強いです。1万円程度の金額差があります。
まとめ
山で低体温になりかけた際は、道具の有無やその性能差が運命を分けるかもしれません。いざという時のためにも、最低限の知識と道具を持ちましょう。


