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【栄養学で解説】行動食の選び方とおすすめ|食べるタイミングや量

岩と沢さん
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・行動食はいろいろ売られているけど、何が良いのか分からない

・行動食は食べればいいのか栄養学的な根拠が欲しい

・疲労回復にもよい行動食とは何か知りたい

登山では行動食が重要だと言われますが、栄養学の観点から説明できる人は少ないです。とりあえず、お腹が空かない程度食べればOKと考える方も多いです。

この記事では、「登山の行動食に必要なことを、栄養学の面から徹底的に解説」しています。

どういった基準で選べばよいかが明確になるので、今後行動食の選び方で迷うことが無くなります。結論は、炭水化物(糖質)をメインに、補助的にクエン酸やタンパク質を摂れば大丈夫です。しかし、食べやすさも重要です。以上の点から、詳しく解説します。

本記事は、以下の書籍を参考に書いています。

岩と沢さん
岩と沢さん
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■JSPO山岳コーチ1
■元登山ガイドステージⅡ
■元登山用品店のショップ店員だった僕。
山に登る事と、新しいギアを山で試すことが好きです。
WEBライターとしても活躍しています。
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行動食が必要な理由と重要性

登山は自分の思っている以上にエネルギーを消費する運動です。短い時間であれば少々食べずとも歩けますが、数時間歩き続けるような登山であれば、適時エネルギーの摂取が必要です。エネルギーを上手に摂らないと、「シャリバテ」や「ハンガーノック」になり、思うように体が動かなくなります。

食べないとハンガーノック(筋肉が動かない)になる

下の図は、「登山の運動生理学百科 図2-20」を基に書いたものです。血糖値の低下と運動に対する「きつさ」を表したものです。血糖値が70を下回ると運動に対して「非常にきつい」と感じるようになります。

朝食を食べてない人は1時間30分できつさを感じ始め、2時間30分で動けないぐらい疲労しました。しかし、2時間30分の時点で糖分を補給すると、血糖値が上がって運動が「楽」に感じたという研究結果です。

「登山の運動生理学百科 図2-20」を基に作成

登山で行動食を食べないと、血糖値が下がり「ハンガーノック」になります。ハンガーノックとはシャリバテとも言われます。上図のグラフの実験データのとおり、1~2時間程度では食べなくても活動に支障はありませんが、それ以上の行動となると疲労感を感じ始めます。

糖分を補給することで血糖値はあがりますが、急激に上がった血糖値は急激に下がるという性質があります。血糖値を急激に上げないためにも、低GI値の食べ物の摂取が薦められます。(後述)

食べないと脳の働きが低下する

行動食を食べないと、疲労感を感じやすくなるだけでなく、脳の働きが弱くなるという点にも注意が必要です。食事で摂取した炭水化物(糖質)は、体内で糖質の最小単位であるブドウ糖に変わります。ブドウ糖は、血液中にある脳や神経系などの唯一のエネルギー源です。

登山の事故は午前11時と午後3時が一番多いです。朝食や昼食を食べてから1~2時間たったころにエネルギーが枯渇し、脳の働きが弱くなって、注意力が散漫になるからだと言われています。

血液中のブドウ糖濃度を数値化したものが血糖値です。
(参考:戦う身体をつくるアスリートの食事と栄養P40)

スタミナとは筋肉に貯蔵されるグリコーゲンの量のこと

炭水化物(糖質)は、筋肉や肝臓にグリコーゲンという形で蓄えられます。筋肉中のグリコーゲンは、筋肉を動かすエネルギー源になります。グリコーゲンの量とスタミナは大きく影響しています。筋肉を動かすグリコーゲンをどれだけ蓄えられるかは、筋肉量と食事内容に影響されます。(参考:戦う身体をつくるアスリートの食事と栄養P40)

運動中に適切に炭水化物を摂取することで、筋肉内のグリコーゲンが補充され、スタミナが持続します。

炭水化物を摂取しないと、筋肉内のたんぱく質が分解されます。つまり、行動中に炭水化物を補給しないと、せっかく蓄えた筋肉を燃料として使ってしまうということです。(参考:登山の運動生理学百科 P52、戦う身体をつくるアスリートの食事と栄養P40)

行動食の選び方のポイント

僕の経験談になりますが、フランスのモンブランを登った際に行動食で大失敗しました。文字が読めないので、登山用品店で珍しい行動食を選んでモンブランを登りましたが、後半で強烈なシャリバテになりました。

今考えれば、圧倒的に炭水化物が足りなかったからだと分かります。行動食の適切な選び方について解説します。

炭水化物(糖質)をメインに選ぶ

「登山の運動生理学百科」によると、1~2日程度の登山では炭水化物が一番重要だと書かれています。長期間の登山となると、全ての栄養素が大事とも書かれています。炭水化物(糖質)は筋肉運動&脳の動力源となりますが、食いだめができないので、適度に摂取する必要があります。

脂肪もエネルギーの源として体内に多く貯蔵できますが、炭水化物との大きな違いがあります。下の図は、「登山の運動生理学百科 表2-4」を参考に、炭水化物と脂肪の違いを表したものです。

炭水化物(糖質)脂肪
燃料として使えるところ・筋肉
・脳
・筋肉
パワー大きい(脂肪の約2倍)小さい(炭水化物の約2分の1)
容量小さい(脂肪の約100分の1)大きい(炭水化物の約100倍)
燃えやすさ・脂肪と一緒でなくても燃える
・乳酸が出ても燃える
・高強度の運動でも燃えやすい
・炭水化物と一緒でないと燃えない
・乳酸がでるとあまり燃えない
・高強度の運動では燃えにくい

炭水化物は大きな力となりますが、容量が小さいために何も食べないと1.5時間ほどでエネルギーが枯渇します。それに対して脂肪は、力は小さいですが一週間以上もエネルギーを出せます。しかし、脂肪は炭水化物と一緒でないと燃えない点に注意が必要です。

行動食を食べるタイミング

国際山岳連盟(UIAA)では、炭水化物を2時間に1回食べることを薦めています。長時間の運動をし続けるためには、炭水化物を2時間に1回摂取して、脂肪を燃やし続ける必要があります。炭水化物を摂取する際にクエン酸を一緒に摂ると、吸収が良くなります(グリコーゲンになりやすくなる)。

【GI値】低いほうが持続的運動に適している

GI値の高い物は、血糖値を上げやすい性質があります。急激に上がった血糖値は急激に下がるという性質があります。つまり、血糖値を急激に上げてしまうと、ハンガーノックになりやすいということです。

よく噛んで食べると、消化がゆっくりになり、血糖値の上昇は緩やかになるようです。GI値は必ずしもでは無いようですが、概ね以下のように分類されます。

GI値の傾向食品の種類
低GI食品(55以下)大豆、レンズ豆、玄米、全粒粉パン、オートミール、ナッツ類、種子類、緑葉野菜、多くの果物
中GI食品(56~69)全粒粉パスタ、さつまいも、ヨーグルト、果物(リンゴ、オレンジなど)
高GI食品(70以上)白米、食パン、パスタ、ポテト、砂糖菓子、清涼飲料水

デンプン類は血糖値をゆっくり上げ、効果も長持ちする。いわゆる腹持ちの良い食べ物です。ご飯や麺類、豆類の方が、パンやイモよりも腹持ちが良いとされています(参考:登山の運動生理学百科P53)

デンプン類はGI値が高いですが、血糖値をゆっくり上げ、効果が長持ちすることから、行動食だけでなく朝食にも良いそうです。

登山のカロリー計算で行動食の適量を知る

行動食はカロリーの多い物が良いですが、カロリーを摂りすぎてるのではないかと不安になる事も多いです。UIAA(国際山岳連盟)の医療委員会が推奨している、エネルギーの消費量の計算方法は以下のとおりです。

■荷物を背負ってない状態
エネルギー=体重×行動時間×6kcal

■10kgの荷物を背負った場合
エネルギー=体重×行動時間×7.5kcal

■20kgの荷物を背負った場合
エネルギー=体重×行動時間×9kcal

「体重60kgの人が、10kgの荷物を背負って8時間歩いた場合の消費カロリーは3,600kcal」の計算となります。登山中にこの全てのカロリーを摂取する必要はありません。なぜなら脂肪があるからです。

登山の運動生理学百科のP56では、上記の計算方法で出したエネルギーの半分~3分の1くらいのエネルギーを補給すれば良いと書いてあります。体重60kgの人が、10kgの荷物を背負って8時間歩いた場合の消費カロリーは3,600kcalなので、行動食として1,200~1,800kcal程度を摂取すればOKです。

1日の糖質の摂取量の目安は、体重1kgあたり7gとされています。(個人差有)

体重60kgの人は、420gの糖質を摂る必要があります。これは行動食だけでなく食事も含まれます。朝食や晩御飯も糖質が大事ということです。(参考:スポーツ栄養学P116)

食べやすさも重要

食べやすさも重要です。先日、槍ヶ岳の北鎌尾根を末端から歩いた際、飲み水が足りなくなったことがありました。その際、食べた行動食はナッツ類。口の中で水分を奪われ、吐き気を我慢しながら食べたのは良い思い出です。

羊羹やグミ類は、水分や元気が無くても食べやすいのでおすすめです。

筋肉疲労を軽減、修復してくれる栄養素もおすすめ

筋肉疲労を軽減したり、筋肉痛を予防したり、筋肉をつけたりするには、体内で生成できないアミノ酸(タンパク質)の摂取が必要です。

【タンパク質(アミノ酸)】筋肉疲労の回復

グリコーゲンの回復には、運動後すぐに糖質とともにタンパク質の摂取が有効です。この時に一緒にクエン酸を摂ると、グリコーゲンの回復がより促進されます。(参考:スポーツ栄養学P118)

運動中に炭水化物を摂取しないと、筋肉内のグリコーゲンが枯渇した際、タンパク質が分解されます。タンパク質が分解されると、筋肉疲労にもつながるので、タンパク質の摂取は大事です。

タンパク質は一度に吸収される量が決まっています。また、寝ている間によく吸収されます。行動食と、就寝前にタンパク質を摂ると良いでしょう。

【BCAA(アミノ酸)】筋肉疲労の回復

小袋に分けたBCAA

BCAAとは、筋肉の修復に必須のアミノ酸であるバリン・ロイシン・イソロイシンのことです。これらはタンパク質の最小単位であり、体内で合成できないため、食事から摂取する必要がある必須アミノ酸です。

BCAAは筋肉の修復に必須のもので、運動前30分、運動中、運動後30分にそれぞれ5~10g摂取することが推奨されています。(参考:クライマーズコンディショニングブックP66)

詳しくはこちらの記事をお読みください。

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おすすめの行動食

これまでの解説を踏まえた上で、僕のおすすめの行動食をご紹介します。

低GI値でカロリーの王様
アーモンド
高カロリー、高タンパク、低いGI値で万能です。
カロリー
609kcal
炭水化物
10.8g
タンパク質
19.6g
値段
230gで500円ぐらい
低GI値でカロリーの王様
ピーナッツ
高カロリー、高タンパク、低いGI値で万能です。
カロリー
609kcal
炭水化物
8.8g
タンパク質
23.3g
値段
250gで200円ぐらい
低GI値で糖質の王様
レーズン
糖質がとにかく高い。糖質の補給にはこれ!
カロリー
301kcal
炭水化物
76.6g
タンパク質
2.7g
値段
280gで300円ぐらい
安くて美味しくて食べやすい
井村屋スポーツようかん
封を切らずに食べられる。パラチノースが配合され、エネルギーが長時間持続する。
カロリー
113kcal
炭水化物
26.5g
タンパク質
1.4g
値段
100円
とにかく食べやすい
ANDO
水分がおおめのようかんなので、疲れた時でも食べやすい。
カロリー
100kcal
炭水化物
23.9g
タンパク質
1.3g
値段
200円
BCAA配合
anpower
BCAAが配合されたようかん。疲労回復にも効果があります。
カロリー
97kcal
炭水化物
24.4g
タンパク質
1.6g
値段
200円
美味しいグミ
パワージェル・ショッツ
行動食に必要な栄養素が高いグミ。普通に美味しいです。
カロリー
211kcal
炭水化物
49g
タンパク質
3.8g
値段
356円
食べやすく腹持ちが良い
エネモチ
エネルギー持続性に優れたモチ。いろいろな味があります。疲れた時でも食べやすい歯ごたえです。
カロリー
149kcal
炭水化物
27.2g
タンパク質
1.5g
値段
313円
機能的で美味しいクッキー
WAYtoGO
高カロリー、高タンパク、高糖質。美味しいけど、しっかり機能的なクッキーです。
カロリー
215kcal
炭水化物
20.5g
タンパク質
7.5g
値段
313円
自然由来にこだわる方に
POWBAR
自然由来にこだわって作られたエナジーバーです。国産。
カロリー
180kcal
炭水化物
18.1g
タンパク質
3.2g
値段
350円

アーモンドなどのナッツ類と、レーズン

1,600kcalのナッツ類詰め合わせ。
アーモンドピーナッツレーズン
カロリー609kcal609kcal301kcal
糖質10.8g8.8g76.6g
タンパク質19.6g23.3g2.7g

ナッツ類はカロリーが多く、タンパク質も豊富です。レーズンは糖質が豊富です。ナッツ類もレーズンもGI値が低いので、血糖値がゆるやかに上昇して急激に下がりません。栄養素だけを見れば行動食に最も向いていると思いますが、やや食べにくい点がデメリットです。

食べきれず余ったナッツ類は、家でビールのお供にしましょう。

【ようかん類】食べやすくて腹持ちも良く万能

井村屋のスポーツようかんは、封を切らずに食べれるので便利です。味も美味しい。コンパクトなので場所もとりません。パラチノースが配合されています。パラチノースは、ゆっくりと吸収されるため、エネルギーが長時間持続し、運動中のスタミナ維持や集中力アップに役立ちます。

一本(40g)あたり
カロリー113kcal
炭水化物26.5g
タンパク質1.4g
袋の真ん中を押すだけで中身が出てきます。手が汚れないのは嬉しい。

福壽堂秀信のANDOは、水分の多いようかんです。さらっと飲めるので、水分が少ない時や疲れたときでも食べやすいです。

一本あたり
カロリー100kcal
炭水化物23.9g
タンパク質1.3g
切り口が途中で止まるので、中途半端なゴミが出ません。

鼓月のanpowerは、BCAAが配合された羊羹です。登山に必要な栄養素を摂取しつつ、筋肉疲労などの回復にも効果があります。中身は普通のようかんで、普通においしいです。

一本あたり
カロリー97kcal
炭水化物24.4g
タンパク質1.6g
BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が配合されてます。【】

【グミ】栄養素が多く、食べやすくて美味しい

パワーバーのパワージェル・ショッツは、必要な栄養素をしっかりと十分に備えつつも、普通に美味しいグミです。グミ好きにはたまらないですね。値段が高いですが、コレは良いですよ。

一袋(60g)あたり
カロリー211kcal
炭水化物49g
タンパク質3.8g

【エネモチ】美味しいお米の機能的行動食

エネモチは、名前の通りエネルギーのあるモチです。食べ応えがありますがしっとりしているので食べやすいです。パラチノースが配合されています。パラチノースは、ゆっくりと吸収されるため、エネルギーが長時間持続し、運動中のスタミナ維持や集中力アップに役立ちます。

一袋(40g)あたり
カロリー149kcal
炭水化物(糖質)27.2g
タンパク質1.5g
食べ応えのある感じです。水分が無くても食べやすいので助かります。

【クッキー】栄養素のバランスに優れる

やや硬いクッキーですが、噛めば噛むほど味がしみでてくるクッキーです。普通に美味しいので、コーヒーのお供に食べたい感じです。栄養素がしっかり入っているので、万能な行動食です。

一個(45.7g)あたり
カロリー215kcal
炭水化物(糖質)20.5g
タンパク質7.5g

【POWBAR】自然由来にこだわりたい方に

自然由来にこだわって作られたエナジーバーです。いろいろな素材が硬められていて、飽きない味です。

一個(40g)あたり
カロリー180kcal
炭水化物(糖質)18.1g
タンパク質3.2g

まとめ

行動食として売られている物を購入して山で食べてみて、随時レポートしていきます。

機能的な行動食はやっぱり良いですが、なんと言っても数が必要な時には値段が気になる所です。その点、ナッツ類とレーズンをメインにしておくと、安く抑えつつも、登山に必要なカロリーや炭水化物、タンパク質が良い感じに摂れます。ナッツ類とレーズンだけだと水が少ないときは食べ辛いので、食べやすくて機能的なものを補助的に選べば良いと思います。

僕のおすすめは、ようかん類、エネモチ、グミです。クッキーもおすすめですが、水分が欲しくなる感じです。

今回はビタミンについては触れていません。ビタミンは体の調子を整えるものなので、こちらもおすすめです。また解説します。

ではまた!

この記事を書いた人
岩と沢さん
岩と沢さん
この記事を書いた人
■JSPO山岳コーチ1
■元登山ガイドステージⅡ
■元登山用品店のショップ店員だった僕。
山に登る事と、新しいギアを山で試すことが好きです。
WEBライターとしても活躍しています。
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