6種類のフリクションヒッチの使い方と特徴|プルージックコードの選び方とおすすめ
フリクションヒッチはクライミングでいざという時に使う重要な技術です。ロープワークは間違えると重大な事故に繋がるので、現地で経験豊かな人から学ぶことが大事です。少しでも予習しておきたい方のために、クライミングでよく使うロープワークを解説します。
クライミングでよく使う6種類のフリクションヒッチを紹介します。ロープとプルージックコードの相性によって使える・使えないがあるので、全て覚えましょう。プルージックコードは専用の物が使いやすいのでおすすめです。
フリクションヒッチとは摩擦で拘束する結びのこと

フリクションヒッチとは、ロープに対して摩擦力を生むスリングの結びのことです。特徴として荷重で拘束(ロック)し、緩める(抜重)と結びが移動します。フリクションヒッチの種類や、ロープとスリングの相性によって拘束力や抜重のしやすさが異なります。
ロープ登高や引き上げシステムなどで使う


フリクションヒッチはスポートクライミングではあまり使われないかもしれません。しかし、本チャンに行くなら必須の技術です。懸垂下降でロープが足りなかった時の登り返しや、懸垂後にロープを回収できない、フォロワーが登れない場合などの緊急時に使います。
実際のやり方については現地で経験豊かなリーダーに教わってください。予習や復習として当ページを活用いただけますと幸いです。
フリクションヒッチ比較表と注意点
クライミングで主に使うフリクションヒッチと、それぞれの特徴などについて解説します。
ロープとスリングの相性によって拘束力などは全く異なります。使えるフリクションヒッチのレパートリーが多いほど、いざという時に役立つので覚えておきましょう。
フリクションヒッチの拘束力のテスト結果

ナイロン、スペクトラ(ダイニーマ)、テクノーラ(アラミドの改良品)それぞれの素材のスリングで、フリクションノットの拘束力を調べた結果です。プルージックは拘束力が強く、オートブロックは拘束力が比較的弱いことが分かります。クレイムハイストはナイロン以外の素材だと拘束力が強いです。
上記の資料では、登り返しする際の荷重は2.2kNとして、これに耐えられるかが基準の一つとされています。Ultratape(テープスリング)は拘束力が弱いですが、巻き数を増やすことで対応できることを示しています。
フリクションヒッチの作り方と特徴
拘束力の強さはフリクションヒッチによって異なりますが、ロープとの相性にもよります。事前に自分のロープで確認しましょう。何周結び目を巻くかはロープとの相性によります。専用のプルージックコードが扱いやすいです。
プルージック

拘束力が強く、濡れたロープだと解除が難しいです。積極的に結び目を動かす使い方には不適です。レスキューなど、ロープが緩んでほしくない場面での使用がおすすめです。作り方は以下の動画を参考にしてください。
>>動画はこちら(英語のサイトに飛びます。別タブで開きます):KNOTS 3D「プルージックノット」
ブリッジ・プルージック

プルージックの結び方と同じですが、スリングの結び目をロープ側にしています。プルージックよりも拘束力が強く、荷重後の結び目の移動も容易です。プルージックよりも汎用性がありますが、結び目が横に広いソウンスリングでは不適です。写真のように自作のスリングが相性が良いです。詳しくは以下の動画をご覧ください。
クレイムハイスト


フリクションヒッチの中でも最も拘束力が強く、扱いやすいとされています。凍ったロープには一番頼れる結び目ですが、濡れたロープでは荷重後の結び目の移動が難しいです。解除にはコツがあり、写真の赤矢印のロープが屈折した部分を指で開くと動かしやすくなります。
マッシャー(オートブロック)

もっとも機能的で実用的だとされていますが、拘束力は比較的弱いです。どちらの方向にも効きやすく、解除も簡単です。結び方も簡単で、確認も容易です。荷重後に効くまでが遅く、岩などに結び目が接したままになると解除されてしまうデメリットがあります。具体的な解説は動画をご覧ください。
マッシャーやオートブロックの名称で紹介されていますが、正しくはマッシャーです。本来、オートブロックとはフリクションヒッチでロープの動きを止めるシステムのことを言います。しかし、多くの本(少なくとも僕が執筆の参考にしている4冊の本)ではオートブロックで紹介されています。
マッシャー・トレッセ

マッシャー(オートブロック)の作り方とほとんど同じです。最後に両端を編み込むように巻き付けます。解除が簡単で、マッシャーよりも拘束力が強いです。マッシャーと違い片方向にしか効きません。また、きっちり完璧に結ぶ必要があります。マッシャーで拘束力が弱い場合の応急処置として覚えておきましょう。
バッチマン

結び目にカラビナがあることで、結び目の解除と移動が容易です。下方向のみに効きます。扱いやすいですが、誤ってカラビナを持たないよう注意してください。作り方などは以下の動画をご覧ください。
フリクションヒッチで使うスリングの素材的特性
スリングの素材には、主にナイロンとダイニーマ、アラミドの3種類が使われています。それぞれメリットとデメリットがあります。2種類の素材を使ったスリングもあります。それぞれの素材的特性をご紹介します。
- ナイロン
- ・伸縮性がある(15%)
・融点が255度と高い
・吸水しやすい。吸水すると強度が下がる
・耐摩耗性が低い(岩角などに弱い) - ダイニーマ(UHMWPE:超高分子量ポリエチレン)
- ・伸縮性が無い(3.5%)
・融点が140度と低い(プルージックなどの使用で表面が溶ける可能性が高い)
・ほとんど吸水しない。
・耐摩耗性が強い(岩角などに強い) - アラミド(テクノーラ、ケプラー)
- ・伸縮性が無い(2.5%)
・融点が500度と非常に高い。
・ほとんど吸水しない。
・耐摩耗性が非常に強い(ダイニーマより強い)
プルージックなどでスリングを使いたいなら、ダイニーマはなるべく避けた方が良いです。ナイロンか、アラミド繊維が使われた物がおすすめです。表面はアラミド、芯にダイニーマを使ったスリングがあるのは、お互いのメリットを掛け合わせた結果です。編み方や混紡比率でスリングのしなやかさが異な点には注意が必要です。(参考:Periodic Inspection of Fall Protection PPE: VAX014)
フリクションヒッチにおすすめなスリング3選
フリクションヒッチには、専用のプルージックコードが圧倒的におすすめです。柔らかく、熱に強く、しっかり決まるように作られています。おすすめは下記の3点です。
![]() ベアール/ジャミー | スターリングロープ/ホローブロック2 | ![]() エーデルワイス/プルージックロープ | |
| おすすめポイント | しなやかで扱いやすい。細いロープにも対応。 | 中空構造によりグリップ力が高い。7mm以上のロープで使用可能。 | 外皮と芯の伸び率が同じなので、締めやすく動かしやすい。 |
| サイズ(cm) | 35,60 | 約35,50 | 量り売り |
| 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
ベアール/ジャミー


プルージックやマッシャーなどフリクションノットに最適なプルージックコード。懸垂下降のバックアップ、自己脱出、固定ロープのオートブロック、レスキューはもちろん、ソウンスリングの規格に適合しているのでビレイアンカーやランナーとしても使えます。しなやかで扱いやすく、細径ロープにもしっかりとグリップ。外被には耐熱性に優れるポリアミド、芯には強靭なテクノーラ®アラミドを使用。繰り返しの屈曲や摩耗に強く、アルパインクライミングやマルチピッチルートで重宝します。
| 強度 | 22kN |
| サイズ(cm) | 35,60 |
スターリングロープ/ホローブロック2

100%テクノーラ®繊維で作られており、耐摩耗性と耐久性が高いです。独自の中空構造により摩擦力が非常に強く、扱いやすいです。7mm以上のロープのプルージックノットやクレムハイストノットで使用できます。値段は高いですが最もおすすめです。
| 強度 | 14kN |
| サイズ(cm) | 35(13.5インチ),60(19インチ) |
エーデルワイス/プルージックロープ
レスキューでの引き上げや、セルフレスキュー等でも重要な役目を果たすプルージックロープです。外被と芯の伸び率が同じように計算されていて、締めやすく、動かしやすいのが特徴です。
| 強度 | 7.2kN(6mm),9.8kN(7mm) |
| サイズ(cm) | 計り売り |
まとめ
フリクションヒッチは本チャンに行くならば必須の技術です。フリクションヒッチは効いたり効かなかったりする場面が多いので、専用のプルージックコードを使い、レパートリーを多く持ちましょう。実際の使い方については、講習などで学ぶことをおすすめします。
参考図書
・山と渓谷社 アルパインクライミング
・山と渓谷社 ロープワーク
・山と渓谷社 山岳セルフレスキュー教本
・UIAA 総合登山技術ハンドブック
・国立登山研修所 新・高みへのステップ


プルージック

マッシャー(オートブロック)
マッシャー・トレッセ
バッチマン
スターリングロープ/ホローブロック2
