【登山届はコンパスで出そう】元登山ガイドが教える提出手順と下山通知の重要性
「登山届は出した方がいい」と分かっていても、書き方や提出先が分からず、結局出さないままの方も多いです。警察署へのメール送信や登山口のポストへの投函といった方法は手間がかかります。今はスマホやパソコンから提出でき、その定番が「コンパス〜山と自然ネットワーク〜」です。
この記事では、遭難対策の実務に関わってきた経験から、コンパスでの登山届の作成・提出・下山通知までの手順を解説します。登山届と下山届の重要性についても解説します。この記事を読むと、次の山行から迷わず登山届を出せます。
コンパスとは|無料で使えるオンライン登山届システムのこと

「コンパス〜山と自然ネットワーク〜」は、公益社団法人日本山岳ガイド協会が運営する、無料のオンライン登山届システムです。パソコン・スマホのどちらからでも利用でき、地図から登山ルートを選んで登山計画を作成し、登山届として提出できます。
コンパスの最大の特徴は、自治体・警察との連携です。36都道府県、47警察本部・自治体と連携しています。万一の遭難時には、提出した登山届が捜索の情報として活用されます。登山口のポストに紙で投函する方式と違い、提出した瞬間から計画が共有されるので安心です。
残念ながら以下の県はコンパスと提携してないので注意が必要です。(2026年7月現在)
「秋田、茨城、大阪、奈良、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、沖縄」
なぜ登山届が命を守るのか|元登山ガイドの視点
登山届の役割は「提出すること」ではなく「遭難したときに捜索の初動を早めること」です。捜索の現場では、登山届の情報が下記のように使われます。
捜索範囲の絞り込み

遭難者がどのルートを、いつ、どの方向に歩く計画だったかが分かれば、捜索隊は限られた人員とヘリを、可能性の高いエリアに集中できます。登山届がない場合、家族の記憶や車の駐車位置から推測するので、捜索範囲が広くなり見つかりにくいです。
時間との勝負への対応
遭難からの生存率は時間の経過とともに下がります。特に低体温症のリスクがある状況では、初動の数時間が生死を分けます。計画書の装備欄などで、要救助者のリスクがわかります。
低体温症については以下の記事でも詳しく解説しています。
>>【低体温症を防ぐ】体温を下げない4箇条&レスキューを呼ぶタイミング、持つべき道具を解説。
他の登山者の計画との照合
コンパスでは、警察が捜索対象者と同じルート・時間帯を歩いた他の登山者の計画から、目撃情報の聞き込みを行うことがあります。登山届が「相互扶助」として他の誰かの命を救います。
コンパスでの登山届の出し方(Web版の手順)
コンパスでの登山届提出は、初回のアカウント登録を済ませば数分で完了します。Web版での手順は下記の通りです。(PC画面での説明となりますが、スマホでも同じように作成できます。)
手順1:アカウント登録

コンパス公式サイトにアクセスし、メールアドレスでアカウントを作成します。無料です。
手順2:登山計画ルートの作成

好きな方法から登山予定のルートを選択します。「マップから」が一番早くて分かりやすいと思います。

登山道が表示されていないところでも自由にルート設定できます。表示されている登山ルートをクリックしていき、出発から下山までのルートを作成します。コースタイムは自動で入力されます。画面右上のように全体の距離・体力強度も自動で表示されるので便利です。


ちなみにですが、地図上で赤いリボンマークがついている山を選ぶと、自動でおすすめのルートが表示されます。初心者が初めて登る場合のルートの参考にしてください。

操作をやり直したい場合は赤矢印の「ひとつ戻る」を押しましょう。緑矢印の入山日と下山日を確認したら、計画作成へをクリックします。
手順3:計画情報の入力

細かな情報を入力していきます。といっても、ほとんどルート作成のときに自動入力された情報が反映されているので、確認していく作業がメインとなります。

もし所属されている山岳会に提出する様式の計画書などがあれば、それも添付できます。
緊急連絡先に家族や友人のメールアドレスを登録しておくと、登山届と下山報告が自動で共有されます。最初は緊急連絡先を入力をする必要がありますが、次回からは選択するだけで良いので手間ではありません。

装備やエスケープを入力する欄もありますが、必須項目ではありません。これらの情報も遭難捜索の際には重要な情報です。僕はいつも山岳会の所定の様式にこれらの情報を記入して添付しているので、コンパスではこの欄は空白のまま提出しています。
あとは、ページ下部の「提出する」ボタンを押すだけです。
手順3:メールの確認

提出したら、会員登録で入力したメールアドレスに上記のメールが届きます。内容を確認しましょう。「計画確認」を押すと計画書が表示され、仲間にも共有できます。
アプリ版の使い方と登山口での提出

コンパスにはiPhone・Android両対応の無料アプリがあります。Webと同じアカウントで使えます。計画書の作成方法もWebとほぼ同じです。アプリならではの利点は下記の通りです。
- ルートのナビとログの集積ができる
- 地図をダウンロードしておくと通信圏外でも表示できる
- 緊急連絡者に位置情報と簡易メッセージを簡単に送れる
- 緊急通報SOSができる
僕としては、計画書の作成はWebの方が使い勝手が良いです。ルートのナビやログ集積などは他のサービスを使っています。
下山通知を忘れずに|コンパス最大の安全機能

コンパスが従来の紙の登山届と決定的に違うのは「下山通知」の仕組みがあることです。
下山後にアプリまたはメールのリンクから下山通知を提出すると、緊急連絡者に「無事に下山した」ことが自動で通知されます。重要なのが逆のケースです。下山予定から7時間が経過しても下山通知が届かないと、コンパスから緊急連絡者へ自動でメールが送られ、いち早く異変に気づけるようになっています。
行動不能になり自分では助けを呼べない状況でも、この仕組みが捜索要請の助けになります。登山届と下山通知はワンセットです。

下山未確認メールが緊急連絡者に何時間後に届くかは、計画書作成の段階で設定できます。
コンパスが使いにくいと感じたときの対処法
コンパスは多機能な分、初めて使う人には分かりにくい部分もあります。よくあるつまずきポイントと対処法を整理します。
ルート作成で目的の登山道が見つからない


マイナーな山域やバリエーションルートは、地図上にルートが表示されない場合があります。その場合は、自分で読図をしてルートを自由に設定するしかありません。読図に自信がない場合は備考欄に書く方法もあります。
計画表の入力項目が多くて面倒
必須項目は実は少ないです。2回目以降はリストから選択するだけの項目もあります。初回だけ少し頑張りましょう。
YAMAPやヤマレコとどう使い分ければいいか分からない
ヤマレコのアプリで作成した登山計画は、コンパスへ登山届として提出できます。普段の地図アプリはヤマレコやYAMAP、登山届の提出はコンパスという使い方が現実的かもしれません。
登山届に関するよくある質問
よくある質問をまとめました。
Q. 低山や日帰りでも登山届は必要か?
A. 必要です。遭難は標高や行程の長さに関係なく起こります。遭難原因の1位は道迷いで、近所の低山だからと油断した登山での遭難は少なくありません。コンパスなら「いつもの山」として、過去の履歴を複製して提出できます。
Q. 紙の登山届と両方出すべきですか?
A. コンパスが自治体と連携している山域なら、コンパスだけで問題ありません。連携していない自治体の山に登る場合は、現地の登山ポストへの投函すると確実です。
残念ながら以下の県はコンパスと提携してないので注意が必要です。(2026年7月現在)
「秋田、茨城、大阪、奈良、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、沖縄」
Q. 登山届を出さないと罰則はありますか?
A. 山域によっては罰則があります。罰則の有無に関わらず、登山届は自分と家族のための備えです。
まとめ
登山届は出すことが目的ではなく、万一のときに捜索の初動を早め、自分と家族を守るための備えです。コンパスを使えば、計画作成から提出、下山通知までスマホ1つでできます。登山届と下山通知を徹底することで、万が一の場合でも生きて帰れる確率が上がります。
登山届とあわせて備えておきたいのが、万一の捜索・救助費用をカバーする山岳保険です。捜索ヘリの費用は1時間で数十万円にのぼることもあります。備えの有無で家族の負担が大きく変わります。山岳保険の選び方は、以下の記事で詳しく解説します。

