【外岩クライミング入門】始め方や安全に楽しむための完全ガイド!ジムとは違うポイント

- ジムの壁じゃ物足りない、本物の岩を登ってみたい
- 外岩クライミングに必要な知識や装備が知りたい
- 外岩クライミングのマナーについて知りたい
自然の岩でのクライミングは、ジムでは味わえない魅力と達成感があります。しかし、自然の岩場には予期せぬ危険も潜んでいます。正しい知識と準備、安全への意識が不可欠です。この記事では、外岩クライミングに挑戦したい方のために、安全に第一歩を踏み出すために必要な情報を詳しく解説します。
この記事を読むことで、外岩の種類や知っておくべき知識、リスク、必要な装備がわかります。楽しい外岩クライミングにチャレンジしましょう。
当ページにて分からない単語はクライミング用語集にて解説しています。
外岩クライミングってどんなもの?種類を知ろう

外岩クライミングは、自然の岩壁や岩を登る行為全般を指します。初心者が目指しやすいのは、アプローチが比較的容易なエリアでの外岩ボルダーや、トップロープクライミングです。 最初は必ず経験者と一緒に行くことが重要です。いくつかのスタイルがあるので、解説します。
ボルダリング

ロープを使わずに比較的低い(数メートル)の岩を登ります。地面にはクラッシュパッドと呼ばれるマットを敷きます。ジムとは違い、ホールドの見極めや、着地点の確認などの要素が加わります。
フリークライミング(スポートクライミング、トラッドクライミング)

ロープを墜落時の安全確保のために使います。登る壁の高さは10~30mと幅広いです。ロープを掛けながら登ることをリードクライミング、ロープが掛かった状態で登ることをトップロープといいます。
あらかじめ支点(ボルト)が打たれたルートを登ることをスポートクライミングといいます。自分でカムやナッツといった支点(プロテクション)をセットしながら登るトラッドクライミングは、高度な技術と判断力が必要です。
マルチピッチクライミング

マルチピッチクライミングは、ロープの長さよりも長いルートを登るクライミングのスタイルです。通常2人1組で行い、リードクライマーとフォロークライマーが交互に登攀と安全確保(ビレイ)を行います。
アルパインクライミング

より高所や山岳地帯で行われる、登山要素の強いクライミングです。天候の変化やアプローチの困難さなど、総合的な登山技術が必要になります。「アルパインクライミング」の定義の幅は広いです。いわゆる本チャン(練習ではなく本番)でのクライミング全般を指します。
どうやって始める?外岩デビューへのステップ

外岩には、ジムとは異なるスキルと知識が求められます。クライミングジムで基本的なムーブやロープワークを身につけ、外岩の知識を学ぶことが、安全への第一歩です。
1.クライミングジムで基礎を徹底的に学ぶ
体の使い方、バランスの取り方は全てのクライミングの基礎です。ジムはクライミングに必要な体の使い方を学ぶのに適しています。
ビレイ(確保)や懸垂下降(ラペル)、ロープの結び方など、安全に関わる技術はジムで習得しましょう。懸垂下降をする必要があるルートで、操作を誤り墜落事故になった事例はたくさんあるので注意が必要です。
2.外岩ならではのリスクを知る

外岩では自己責任が原則です。ジムでは管理者が安全管理を行ってくれますが、外岩では自分で安全管理をする必要があります。外岩ならではのリスクは以下のとおりです。
- 岩が欠けたり、落ちてくることがある。
- 支点は自分で設置、回収する必要がある。
- 支点が抜けてしまう可能性がある。
- トイレはない。
- ヘビやハチなど害虫にも気を付ける。
外岩では岩が落ちてくる可能性があるので、休憩場所も慎重に選ぶ必要があります。支点には注意が必要で、支点が抜けて5mほど落ちてしまい、訴訟問題になった事例もあります。支点の見分け方についてはこちらの記事で解説しています。
>>クライミングのボルトの支点や種類について図解解説!信頼できる支点とは?
3.外岩を登る前に必要な情報を手に入れておく
初めて行く外岩でクライミングをするために、あらかじめ知っておくべき情報は多いです。具体的には以下のとおりです。
- アプローチ
- 岩場までの道のりは、険しい山道や分かりにくい場所もあります。地図読みのスキルや体力も必要になります。
- 天候
- 雨で岩が濡れると登れません。気温の変化、風の強さなども考慮する必要があります。
- トポ図
- 登るルートの概念図やグレードが記載されたものがトポ図です。よほど腕に自信のある方以外は、事前にトポ図を入手したほうが楽しめます。
- 緊急時の対応
- 家族に行き先を知らせておきましょう。場合によっては登山届も必要です。道迷いでの遭難や滑落などのリスクへの対応を考えておきましょう。
- 岩質
- 花崗岩や石灰岩、凝灰岩など、岩の種類によってフリクション(摩擦)や形状、脆さが異なります。自分の好きな岩質を見つけましょう!
4.岩場のルールとマナー

基本的に、岩場は地権者のものです。昔は地権者に黙って開拓された岩場も多く「クライマーが勝手に岩場を登っている、不法駐車をしている」などのトラブルが後を絶ちませんでした。その流れを経て、現在は地権者の許可を得て開拓されているルートが多いです。
開拓者はルートを作る技術だけではなく、地権者とのコミュニケーションや開拓後の管理など、さまざまなスキルが必要です。クライマーのマナーが悪いと「もうこの岩場には来ないでくれ」となります。開拓者や地権者へのリスペクトを忘れないようにしましょう。
岩場によってはローカルルール(その岩場独自のルール)があります。岩場は国立・国定公園内にあることも多いです。クライマー全体への信頼を損なわないように注意しましょう。ルールの一例は以下のとおりです。
- ゴミは捨てずに、すべて持ち帰る
- 動植物をとらない
- 迷惑な場所に駐車をしない
- 山火事に注意する
- キャンプは指定地でする
- 大声で騒がない
- 地元の方を尊重、優先する
- 地権者の善意を尊重する
- トイレは指定の場所か、携帯トイレを使用する
- チョーク跡は登り終わったら清掃する
- 岩など自然物を傷つけない
- 不用意にボルトなどを設置しない
5.保険に加入する
クライミングが適用される、専用の保険に入りましょう。通常の障害保険などは、クライミングを対象外としているものが多いです。日本山岳共済会の保険や、ココヘリなどがおすすめです。
6.経験豊富な人に連れて行ってもらうか、外岩講習会などに参加する

信頼でき、指導力のある経験者に同行をお願いしましょう。ただし、相手任せにせず、積極的に学び安全確認を行う姿勢が重要です。ジムで経験を積み、信頼できる経験者やプロの指導のもとで、安全に外岩デビューを果たしましょう。
山岳会への入会もおすすめです。クライミングを長く、幅広く楽しむには、人間関係も重要だと考えています。焦らずに謙虚に学びましょう。僕は山岳会に入会して16年が経ちますが、入っててよかったと感じています。
何が必要?外岩クライミングの装備リスト
外岩クライミングでは、ジムでの装備に加えて、安全確保やアプローチのためのアイテムが必要です。網羅的に解説します。
外岩クライミングに必要な最低限の装備
クライミングシューズ

クライミングシューズは、値段が高いシューズほど登りやすいわけではありません。初心者は長時間履いても足が痛くなりにくい靴がおすすめです。楽しいクライミングでも、足が痛いと楽しくないです。
自分に最適なクライミングシューズは、最低でも3足は履かないとわからないです。まずは足が痛くなりにくくて値段が安いシューズを選びましょう。足が痛くなる原因と合わせて、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>【初心者の一足目の選び方】クライミングシューズの選び方とオススメ
足のサイズが分からない方にはZOZOMATがおすすめです。専用の機械で測った値とほぼ同じ値が出ます。
>>【ZOZOMAT】足の実寸を測って、クライミングシューズのサイズ感を知ろう!
ヘッドライト

ボルダリングを楽しんでいると、いつの間にかあたりが真っ暗になることもあります。明るいうちに下山したとしても、道に迷ってしまう可能性もあります。暗くなるまで登るつもりはなくても、ヘッドライトは必ず持ちましょう。
ヘッドライトは自分の使い方に合ったものを選ばないと、操作に戸惑うことがあります。こちらの記事で詳しく解説しています。
>>【明るさだけじゃない】登山用ヘッドライトの選び方とおすすめ|6種類を比較
アプローチシューズ

駐車場から岩場へ履いていく靴のことをアプローチシューズといいます。道が歩きやすい場合は靴はなんでも大丈夫です。ただし、岩場に着くまでに岩を登ったり、川を渡ったり、長時間歩く場合にはアプローチシューズがあると便利です。
こちらの記事ではアプローチシューズの選び方について解説しています。普段も履きやすい靴をおすすめします。
>>マルチピッチから普段履きまで!アプローチシューズの選び方
チョーク、チョークバッグ

チョークとは、手に付ける滑り止めのことです。さまざまな種類がありますが、初心者は一番安い物で十分だと思います。チョークにこだわるのは、高難度のグレードが登れるようになってから考えましょう。
チョークバッグは大きい物のほうが、手を入れやすいく使いやすいです。大きめを選びましょう。
ボルダリング(外岩ボルダー)に必要な装備
クラッシュパッド(ボルダリングパッド)

けがの防止のためにも、初心者は必ず使いましょう。厚みや大きさはさまざまです。
ブラシ

岩に付いたチョークを落としたり、汚れを落とす際に使います。チョークが岩に付いたままだと、ホールドが分かりやすくて喜ぶ人も居るかもしれません。しかし、登山者やオンサイト(何の情報もなく、落ちることなく登りきること)を狙う人にはチョークは邪魔かもしれません。
フリークライミング(スポートクライミング、トラッドクライミング)に必要な装備
ビレイデバイス

ビレイデバイスとは、パートナーを確保するクライミングギアのことです。ビレイデバイスの種類はさまざまあります。それぞれ用途があるので、自分に合ったものを選びましょう。初心者の方には、ビレイの基本動作が学べるチューブ型(ATCやルベルソなど)がおすすめです。
マルチピッチ向けビレイデバイスをこちらの記事で解説しています。
>>マルチピッチ向けビレイデバイスの選び方【4商品を徹底比較!】
クイックドロー(ヌンチャク)

岩に打ち付けられている支点と、ロープを素早くクリップするためのクライミングギアです。ルートの長さにもよりますが、10~20個程度は必要です。軽さや大きさ、長さ、扱いやすさなど考慮すべき点は多いので、自分の用途に合ったものを選びましょう。
スリング

立木に巻いて支点としたり、セルフビレイをとったりするために必要なギアです。何かと使う場面は多いので、短いものから長いものまで、複数個持っておくと安心です。スリングは奥が深いので、こちらの記事を参考にされてください。
>>【徹底解説】用途別スリング7選&クライミングでの使い方を分かりやすく解説!
カム、ナッツなどのナチュラルプロテクション

ルートの中には、ボルトの代わりにカムやナッツの使用が前提となっているルートがあります。カムやナッツが必要かどうかは、トポ図などで登る前に必ず確認しましょう。カムやナッツの選び方はこちらの記事で解説しています。
>>【クライミング】各メーカーのカムの違いと選び方【キャメロットが良いの?】
カラビナ

カラビナの種類はあまりにも多く、初心者が選ぶには難しいです。カラビナ選びで失敗しないために知識を身につけましょう。自分にどのカラビナが使いやすいのか、じっくり選びたい方にはこちらの記事がおすすめです。
>>クライミング用カラビナを徹底解説【登山でも使えるオススメ18種類】
ヘルメット

落石から頭を守ったり、頭から落ちて岩に打ち付けてしまったりするのでヘルメットは必要です。メーカーによってヘルメットの形は変わります。日本人の頭の形にあったヘルメットを選びましょう。
ハーネス

落ちた時の衝撃から身体を守ってくれます。ハーネスに身体を預けた際に快適かどうかが、ハーネス選びのポイントです。お店で選んだとしても、実際にぶら下がらないと快適さはわかりません。ハーネスの選び方のポイントをこちらの記事で解説しています。
>>【おすすめ12選】クライミング用ハーネスの使い方と選び方を徹底解説!
クライミングロープ

クライミングロープは種類がさまざまで、見た目はどれも同じなので違いが分かりにくいです。1本で使うならシングルロープを、2本で使うならダブルロープ(ハーフロープ)を選びましょう。太いほど耐久性は高い傾向にあり、細いほどロープ操作が行いやすくビレイ技術が重要です。
クライミングロープにはさまざまな規格があります。それぞれこちらの記事で詳しく解説しています。
>>クライミングロープのおすすめと選び方【ダブルとシングルの違いとは?】
外岩クライミングにあると便利な装備
救急セット(テーピング)

ハチやヘビに刺された場合に備え、救急セットを持っていきましょう。ポイズンリムーバーは必携です。指の皮がめくれたり、けがをしたりした際に必要な道具も必要です。夏場は熱中症にも注意しましょう。
プロテイン、BCAA

クライミングには、最低限の筋力も重要だと考えています。効率的に筋肉をつけるには、補助食品が効果的です。適切に食事を摂らないと、せっかく蓄えた筋肉をエネルギーに使ってしまいます。プロテインやBCAAについてはこちらの記事で解説しています。
>>【効果的プロテイン・BCAAの選び方】クライミングとボルダリングが上達!3ヶ月検証
マルチピッチクライミングに必要な装備

マルチピッチクライミングは他のクライミングでは感じられない「山頂へ抜ける喜びや楽しみ、充実感」を感じられます。僕のおすすめの山の楽しみ方です。しかし、マルチピッチクライミングを楽しむためには、知るべき知識や必要な道具がさらに増えます。
マルチピッチクライミングは手順が重要です。こちらの記事で、詳しく解説しています。
>>【基本】マルチピッチクライミングの手順&事前に準備すべきものを解説!
マルチピッチクライミングに必要な装備を、こちらの記事で網羅的に解説しています。
>>【用意したい物20選】マルチピッチクライングの装備を徹底解説!
マルチピッチクライミングは、長時間履いても足が疲れず、痛くなりにくいクライミングシューズだと快適です。選びび方のコツをこちらの記事で解説しています。
>>マルチピッチ向けクライミングシューズ【オススメ3選徹底比較!】
まとめ
外岩クライミングは、ジムクライミングとは一味も二味も違う魅力に満ちています。山のパートナーと一緒に、目標をもって登る外岩は格別です。しかし、外岩クライミングには常にリスクが存在します。
安全への意識、正しい知識と技術、自然への敬意が大事です。外岩クライミングを長く楽しむためには、経験豊かな人に現地で教わるのが一番です。山岳会に入会したり、講習会へ積極的に参加しましょう。