【元登山ガイドが解説】アルパインヌンチャクの作り方と必要本数|シーン別の使い分けまで完全ガイド
マルチピッチクライミングや沢登り、アルパインクライミングを始めると、必ず耳にするのが「アルパインヌンチャク」です。通常のクイックドローと異なりルートに合わせて長さを調整できるので、使いこなすと登攀の安全性が高まります。自作しようとすると「どのカラビナとスリングを組み合わせればいいのか」「何本必要なのか」「マルチピッチと沢登りでの使い分けは違うのか」と、迷うポイントが多いです。
この記事では、マルチピッチ・沢登り・アルパインクライミングを行ってきた経験から、アルパインヌンチャクの作り方、必要な本数の目安、シーン別の使い分けまで解説します。この記事を読むと、自分のスタイルに合わせて理想のアルパインヌンチャクを自作できます。
アルパインヌンチャクとは?クイックドローとの違い
アルパインヌンチャクとは、60cmまたは120cmのスリングと2枚のカラビナを組み合わせた、長さを調整できるクイックドローのことです。通常のクイックドローとの違いを解説します。
長さを変えることで、長いルートで使いやすい


通常のクイックドローは15cm程度の長さで固定されていますが、アルパインヌンチャクは束ねた状態で約15cm、広げた状態で約60cm(120cmスリングなら約120cm)と、用途に合わせて長さを使い分けられます。

アルパインのルートはピッチごとに方向が変わることが多く、通常のクイックドローではロープが屈曲してドラッグ(摩擦抵抗)が大きくなります。スリングを伸ばしてロープを直線に近づけることで、リードクライマーの登攀が格段に楽になります。
長いルートほど、ロープの屈曲による摩擦は大きくなります。上手くアルパインヌンチャクを使わないと、登るたびにロープを力いっぱい手で引く必要がある事もあります。安全のためにもアルパインヌンチャクを使いましょう。
軽量化につながる


通常のクイックドローと比べて、ダイニーマスリングを使ったアルパインヌンチャクは軽量化しやすいです。特にアルパインルートではクイックドローを多く持って行くことがあるので、メリットが大きいです。
アルパインヌンチャクよりもはるかに軽量なクイックドローもあります。
アルパインヌンチャクが必要なシーン
フリークライミング(スポーツクライミング)など固定支点が直線的に並ぶルートでは、通常のクイックドローの方が扱いやすく、アルパインヌンチャクを使う必要性は低いです。アルパインヌンチャクが活躍するシーンについて解説します。
- マルチピッチクライミング
- ルートの方向が変わりやすく、ロープの流れを確保するために長いクイックドローは必須です。軽量で長さを変えられるアルパインヌンチャクが使いやすいです。
- 沢登り
- 沢のルートは曲がりくねっており、ロープの屈曲が重大なリスクになる可能性があります。また、沢登りでは保水しにくいダイニーマ素材のスリングを使うことで、濡れによる重量増を抑えられます。
- アルパインクライミング
- 装備の軽量化と汎用性が求められます。アルパインヌンチャクは「短いクイックドロー」「長いランナー」「セルフビレイ用スリング」と複数の用途を兼ねられるため、メリットが大きいです。
アルパインヌンチャクの作り方
アルパインヌンチャクの作り方は以下の手順で組めます。
準備するものはスリングとカラビナ2枚

60cm(または120cm)のダイニーマスリング1本と、カラビナを2枚用意してください。
アルパインヌンチャクの作り方の手順




①の手順のように60cmのダイニーマスリングを2枚のカラビナに通します。②でグレーのカラビナにオレンジのカラビナを通します。③でオレンジのカラビナを束ねたスリングに掛けます。この際2本のスリングにまとめて掛けるのがポイントです。④で完成となります。
アルパインヌンチャクの使い方




登攀中にスリングを伸ばしたいときは、ロープ側のカラビナを片手で持ち、スリングに引っ掛けて引っ張るだけで瞬時に60cmの長さに展開できます。片手で操作できるのもアルパインヌンチャクのメリットです。
アルパインヌンチャクに使うカラビナとスリングの選び方
アルパインヌンチャクは「スリングとカラビナの組み合わせ方方」で性能が大きく変わります。それぞれの選び方を解説します。
カラビナの選び方


アルパインヌンチャクに使うなら、引っ掛かりのないカラビナがおすすめです。引っ掛かりの有無でアルパインヌンチャクとしての使いやすさに大きな影響があります。引っ掛かりのあるカラビナはおすすめしません。



アルパインでは支点側のカラビナのノーズは細い方が使い勝手が良いです。例えばハーケンを打ち込んだ際、岩との角度などの問題でカラビナホールが少し隠れてしまうことがあります。ノーズが太いとカラビナホールに入らないですが、細いと入ります。
ロープ側のカラビナは、ワイヤーゲートまたはベントゲートだとクリップがしやすく扱いやすいです。ワイヤーゲートの方が軽量ですが、ノーズが太かったり引っ掛かりがある物が多いので見極めが大事です。
以下の記事では、カラビナ選びの詳細解説をしています。具体的なおすすめ商品を比較したい方は、参考にしてください。
>>クライミング用カラビナを徹底解説【おすすめ34選!】登山でも使える基礎知識も解説
スリングの選び方
素材はダイニーマ(10~8mm)が基本です。ナイロンより軽量で、保水しにくいため沢登りでも安心です。水濡れでの強度低下も低いです。長さは60cmが汎用性が高く、長いランナーが欲しい場合は120cmを使います。幅は8mmが扱いやすく、6mmは軽量重視向きです。
以下の記事では、スリング選びの詳細解説をしています。具体的なおすすめ商品を比較したい方は、参考にしてください。
>>【スリング徹底解説】クライミングで必要な知識と使い方!用途別おすすめスリング14選
アルパインヌンチャクは何本必要か?シーン別の目安
アルパインヌンチャクの必要な本数は、登るルートによって異なります。シーン別の目安を解説します。
- マルチピッチクライミング
- 60cmスリングで作るアルパインヌンチャクを4本程度+通常のクイックドロー数本+120cmスリング数本という組み合わせがおすすめです。クイックドローとスリングの数はルートに合わせて変動させます。
- 沢登り
- 沢登りではクイックドローよりもアルパインヌンチャクのほうが使い勝手が良いため、アルパインヌンチャクを主体に多く持って行きましょう。本数は沢のグレードによって変動します。
- アルパインクライミング
- ルートの長さで変動します。長いルートではアルパインヌンチャクを多めに持って行きましょう。
- ショートルート(スポートルート)
- ルート情報に応じて調整します。基本的にはアルパインヌンチャクよりもクイックドローを使います。
アルパインヌンチャクの使い分けと注意点
アルパインヌンチャクは「いつ伸ばし、いつ短く使うか」の判断が重要です。基本的な使い分けについて解説します。
短く使う場面
- 支点が直線的に並んでいる時
- 支点と次の支点の距離が短い時
- クイックドローと同じ感覚で使いたい時
長く使う場面
- ルートが曲がっている・ロープが屈曲する時
- 支点同士の距離が長く、ロープドラッグが懸念される時
- オーバーハングなど支点から離れた位置にロープを通したい時
使用時の注意点


アルパインヌンチャクは、カラビナをゴムなどでスリングに固定してはいけません。分かりやすくするために、写真ではゴムの代わりに青色のテープで片方のカラビナを固定しています。クイックドローをゴムで固定すると、使い方を誤った時に体重をかけるとカラビナが外れます。
アルパインヌンチャクはゴムで固定せずに使用してください。ただし、ソウンスリングではなく一本のスリングを使用しているなら固定しても大丈夫です。
まとめ
アルパインヌンチャクは、マルチピッチ・沢登り・アルパインクライミングなどで使うと登攀の安全性が上がります。60cmダイニーマスリング+カラビナ2枚で自作できます。登るルートに合わせて本数と長さを使い分けると良いです。
アルパインヌンチャク以外のクイックドローの選び方や、各メーカーのおすすめ商品については、以下の記事で詳しく解説しています。自分の登攀スタイルに合わせて、最適なクイックドローのセットを揃える参考にしてください。


